5月 302011
 

中国杭州千島湖畔のリゾートホテルで開催された国際会議ADCONIPの終了後,旅程を変更して浙江大学を訪問した.浙江大学は,中国浙江省杭州市,中国十大風景名所として有名な西湖の近くにある.

朝,浙江大学のXie准教授が,宿泊したホテルまで公用車で迎えに来てくれた.ホテルは浙江大学の目の前にあるのだが,見学後そのまま上海浦東国際空港へ移動するため,スーツケースを公用車に積んでもらう.

公用車VWパサートで送迎@浙江大学
公用車VWパサートで送迎@浙江大学

今回ツアーに参加するのは,Imperial College LondonのNina,東京のM先生,そして私の3名だ.西湖畔のホテルでNinaをひろった後,我々2名を乗せて大学へ.ちなみに,このホテルは浙江大学が運営していて,我々の他にも日本人が宿泊しているようだった.また,2007年にNordic Process Control Awardを受賞したDr. Jacques Richaletも宿泊していた.彼とは,朝食のときと,大学見学後に空港へ向けて出発する間際に校内で話をした.彼は次に日本を訪れる.

大学が運営するホテル@浙江大学
大学が運営するホテル@浙江大学

今回訪問したのは,Institute of Cyber-Systems & Controlという研究所.その前身は,1999年に設立された高度プロセス制御研究所(Institute of Advanced Process Control)だ.現在,14名の教授(full professor),19名の准教授(associate professor),20名の講師(lecturer)やポスドク(postdoctoral fellow),約200名の大学院生から構成されている.その研究分野は次のように説明されている.

The faculty and research associates of CSC perform fundamental and application research in the field of Control Science and Engineering, Pattern Recognition and Intelligent Systems, Detection Technology and Automatic Equipment.

大いに注目してもらいたい.要するに,制御関連の研究を遂行するために,53名の研究スタッフを擁している研究所がCSCだ.そこでは,約200名の大学院生が研究に邁進している.どうやったら日本は太刀打ちできるのだろうか.本気で心配になる.

このCSC研究所を率いているのが,浙江大学副学長のJian Chu教授だ.彼は,国際的に事業を展開しているプロセス制御機器企業SUPCONの創業者で,成功したビジネスエリートでもある.私にとって,Chu教授はプロセスシステム工学研究室の先輩にあたる.今回の浙江大学訪問も,Chu教授に手配していただいた.

1つ補足しておく必要があるだろう.このCSC研究所は,”Department of Control Science & Technology”内の組織にすぎない.制御科学技術学科全体の規模はその3倍にもなるということだ.果たして,日本の大学何個分に相当するだろうか.

CSCが入る建物の1つ@浙江大学
CSCが入る建物の1つ@浙江大学

最初に案内してもらったのは,分散型制御システム(DCS)が設置された演習室だ.企業のオペレーションルームが再現されており,シミュレータを利用して,プラント運転について学ぶことができるようになっている.このような設備を大学が保有していることに驚かされる.

教育用DCS演習室@浙江大学
教育用DCS演習室@浙江大学

学生用の研究室は,明るく快適そうだ.下の写真は,燃料電池の研究を実施しているグループの研究室で,実験室と隣接している.教科書類は予想よりも英語が少なく,中国語の本が多い印象を受けた.

研究室の1つ@浙江大学
研究室の1つ@浙江大学

今回の研究所ツアーは,Xie准教授の引率で,彼のグループに所属している修士課程学生Ms. Gaoがサポートしてくれた.ツアー中に写真を撮ったり,色々な質問に答えてくれたり,ツアー後には撮影した写真のいくつかをメールで送付してくれた.そのメールにはこうある.

I have read many papers of you and I admire your academic attainments enormously. So it is a great pleasure to take a photo with you.

礼儀正しく,お世辞も上手い.だが実際,国際会議ADCONIP参加中も,浙江大学等の学生が「加納教授ですよね.あなたの論文をたくさん読んでいます.ところで,○○の論文について質問があるのですが...」と話しかけてきてくれた.なんとも有り難いことだ.それに,その積極性が偉いと思う.日本の学生にもそのようにあって欲しい.

上海万博に登場したロボット@浙江大学
上海万博に登場したロボット@浙江大学

教育用DCS演習室を見学した後,浙江大学で開発された複数のロボットを見せていただいた.1つは上海万博で活躍したロボットで,37体(だったか?)あるとのことだった.胴体内部にWindows XPのパソコンが設置されており,多言語での案内ができるようにになっている.上海万博で利用した方もいるだろう.

ロボコンに出場したロボット@浙江大学
ロボコンに出場したロボット@浙江大学

ロボコン国際大会に出場した二足歩行ロボットも見学した.この二足歩行ロボットは顔にカメラを搭載しており,自身の位置やボールの位置を把握する.仰向けやうつ伏せの状態から自力で立ち上がることもできる.サッカーをするデモを見せてもらったが,歩行はゆっくりで,バランスを取るためにキック動作はさらに遅くなる.前回のロボコン国際大会では,ドイツチームが優勝したそうだ.そのときのビデオを見ながら,浙江大学チームは移動速度とバランスで劣っていたと解説してくれた.次を目指して着々と進化させているようだ.

サッカーロボット@浙江大学
サッカーロボット@浙江大学

さらに,サッカー専用ロボットも見学した.このロボットは人間型ではなく,4輪で自由自在に動きまわり,物凄いスピードでボールを蹴る(ピストンで押し出す).先述の二足歩行ロボットとは異なり,天井に設置されたカメラで位置を把握し,中央集権的なコンピュータからの指示を無線で受けて動作する.とにかく,ボールのスピードが印象的だった.

サッカーロボット@浙江大学
サッカーロボット@浙江大学

こうして様々な設備を見学させていただいた後,Faculty Club(のようなものだとの説明だった)の個室で中華料理をご馳走になった.これまた凄い品数で,とても美味しく,お腹一杯になった.我々訪問者3名,Xie准教授,ツアーに付き添ってくれた学生のGaoさん,空港まで付き添ってくれた男子学生(名前を覚えておらず問い合わせ中),そして公用車のドライバーの男性の7名での食事だった.

非常に楽しい昼食会で,色々なことを話したが,Xie准教授から時事ネタを1つ質問された.

「日本のロボット技術は大変優秀だ.ところが,福島原発事故では外国のロボットを利用しているという話じゃないか.どうして,日本のロボットを使わないんだ?」

Ninaも学生も「うん,その通り.どうしてなの?」という顔をしている.実に素直な疑問である.世界中の人々がそう思っていることだろう.だから,きちんと答えてきた.

「確かに,日本のロボット技術は優秀だと思う.様々な災害救助用ロボットも開発されている.でもね,日本の原子力発電所は100%安全なんだ.政府や電力会社によると,万が一にも事故なんて起こらないんだ.だから,原発用のロボット開発は認められていない.そんなことは許されていないんだ」

全員,爆笑.

昼食後,朝にホテルから大学まで乗せていただいた公用車VWパサートに再び乗って,上海浦東国際空港まで送っていただいた.浙江大学のある杭州市から上海浦東国際空港までは片道約3時間.M先生は空港近くでもう1泊されるが,私は夕方のフライトに間に合う必要があるので(かどうかは知らないが),かなり高速道路をアグレッシブに運転していただいた.スピードはそれほどでもないのだが,遅い車には容赦せず,路肩も活用して次々と追い抜いていく.もちろん,その度にクラクションだ.なるほど,これが中国流の運転というわけだ.高速道路は空いていて,余裕を持って空港に到着した.

ドライバーの方には浙江大学までさらに3時間ほど運転していただかないといけない.また,同乗してくれた学生さんも3時間かけて浙江大学まで戻らなくてはならない.貴重な時間を我々の訪問のために費やしていただいたことに深く深く感謝しつつ,帰国の途についた.

  2 Responses to “中国杭州の浙江大学訪問: Institute of Cyber-Systems & Control, Zhejiang University”

  1. こんにちは.
    浙江大学の教育・研究環境にただただ驚いています.恐ろしいとさえ思います.ある若手研究者の方から「若いうちに海外に出た方が良い.中国人がいかにガツガツしているか,というのを実感して危機感を持った方が良い.」とアドバイスを頂いたのですが,まさにその通りですね...
    電気原チャリや太陽光発電の記事も印象深かったです.現在のわが国の指導者層のうち多数はこういったエネルギーシステムについて意思決定が異常に遅いか,そもそも彼ら・彼女らの持つ知識・情報が古いのではないか,という印象を持っています.京大や東工大が設置した指導者養成大学院がどのような役割を果たすか注目しています.

    • 本当に凄いですよ.
      百聞は一見に如かずで,一度,自分の目で確かめてみることをお勧めします.

      日本以外の学生はそうなんですが,就職というのは,自分の能力を売ることなんですね.だから,いかに高く買ってもらうかということを考えている.このため,自分の能力を高めることにも貪欲になります.それで自分の商品価値が左右されますからね.さらに,就職した後も学ぶことをやめません.自分の価値を高める必要があることを自覚しているからです.このあたりの感覚が日本人学生は甘いように感じます.

      あまりに十把一絡げな物言いで,良くないかもしれませんが,もっと危機感持てよと言いたいわけです.国内で就職難とか言ってますが,近い将来,国外の学生とも競争せざるをえなくなるわけですから.相手は,半分の給料で2倍働くというんですよ.どうやって勝負するの?ということです.

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