6月 212011
 

超訳 ニーチェの言葉
フリードリヒ・ニーチェ(著),白取春彦(訳),ディスカヴァー・トゥエンティワン,2010

本書のような,○○の言葉とか,○○一日一言とかいうのを読むのは,明らかに手抜きであって,堕落している.古典の最初の一文だけを記憶する学校国語並みに堕落している.でもまあ,このような本をキッカケとして,お気に入りの言葉が書かれた本を読んでみるのなら,価値はあるってものだろう.

タイトルの通り,本書はニーチェの著作から彼の言葉232個を抜粋して並べたものだ.ちなみに,私はニーチェの著作をほとんど読んでいない.これまでに読んだのは「この人を見よ」だけだ.それでも,強烈な衝撃を受けたことを覚えている.「何者だ,こいつは?」と思ったものだ.

さて,いくつかの言葉を紹介してみよう.

腹を立てないためには,自分の評判や評価など気にしてはいけない.他人がどう思っているかなんてことに関心を向けては絶対にいけない.そうでないと,本当は嫌われているのに,部長だの社長だの先生だのと呼ばれることに一種の快感や安心を覚えるような人間になってしまう.

身の周りや世間で起きているいろいろな事柄に,そのつどごとに首を突っ込んでいると,結局は自分が空っぽになってしまう.

一日をよいスタートで始めたいと思うなら,目覚めたときに,この一日のあいだに少なくとも一人の人に,少なくとも一つの喜びを与えてあげられないだろうかと思案することだ.その喜びは,ささやかなものでもかまわない.そうして,なんとかこの考えが実現するように努めて一日を送ることだ.この習慣を多くの人が身につければ,自分だけが得をしたいという祈りよりも,ずっと早く世の中を変えていくことだろう.

心には,いつも喜びを抱いているように.これが人生で最も大切なことなのだから.

多くの人々を納得させたり,彼らに何らかの効果を及ぼしたいのなら,物事を断言すればいい.自分の意見の正当性を,あれやこれや論じてもだめだ.そういうことをすると,かえって多くの人々は不信を抱くようになるのだ.自分の意見を通したいなら,まずは断言することだ.

自分を称賛してくれるのは,自分と似たりよったりの人々だ.自分もまた,自分と似たりよったりの人を称賛するものだ.自分と同類の人間でないとうまく理解できないし,よしあしもよくわからない.また,自分とどこかで似ている相手を称賛することで,なんだか自分も認められているような気になるものだ.つまり,人間にはそれぞれのレベルというものがある.そのレベルの中で,理解や称賛,迂回した形での事故の認め合いが行われているというわけだ.

「隣人を愛せよ」このような言葉を聞いてもおおかたの人は,自分の隣人ではなく,隣人の隣に住む人,あるいはもっと遠くに住む人を愛そうとする.なぜならば,自分の隣人はうざったいからであり,愛したくないからである.にもかかわらず,遠くの人を愛することで,自分は隣人愛を実践していると思い込む.人は何事も自分のつごうのよいように解釈する.このことを知っていれば,いくら正論を並べても,それが実現化されることが少ないのが理解できるだろう.

何か奇抜なことをして衆目を集めるのが独創的な人物ではない.それは単なる目立ちたがり屋だ.たとえば,独創的な人間の特長の一つは,すでにみんなの目の前にあるのにまだ気づかれておらず名前さえ持たないものを見る視力を持ち,さらにそれに名称を新しく与えることができる,ということだ.名称が与えられて初めて,それが実際に存在していることに人間は気づくものなのだ.そうして,世界の新しい一部分が誕生してくる.

説得力のある論理的な文章を書くためにいくら文章技術を学んだとしても,論理的な文章を書けるようにはならない.自分の表現や文章を改善するためには,表現や文章の技術を取り込むのではなく,自分の頭の中を改善しなければならないからだ.このことがすぐにわからない人は,理解力が足らないのだからいつまでもわからず,どこまでも目先の技術にこだわり続けることになるだろう.

信念がある人というのはなんとなく偉いように思われているが,その人は,自分のかつての意見をずっと持っているだけであり,その時点から精神が止まってしまっている人なのだ.つまり,精神の怠惰が信念をつくっているというわけだ.

きちんと考える人になりたいのであれば,最低でも次の三条件が必要になる.人づきあいをすること.書物を読むこと.情熱を持つこと.これらのうちのどの一つを欠いても,まともに考えることなどできないのだから.

う~ん,なるほどなぁ~,と思わず唸ってしまうような言葉がいくつかあった.流石だ.

目次

  • 己について
  • 喜について
  • 生について
  • 心について
  • 友について
  • 世について
  • 人について
  • 愛について
  • 知について
  • 美について