7月 272011
 

「日本人の英語」(マーク・ピーターセン,岩波書店,1988)を読んで,顔面蒼白になったと書いた.

その本から,あと少しだけ,前置詞やコンマの使い方についての指摘を紹介しておこう.その意図は,英語が上手ではないけど論文や文章を書かないといけない人に,本書「日本人の英語」を読んでみようかなと思ってもらうことだ.

Clean out your desk!(机の中を片付けてきれいにしなさい)

Clean off your desk!(机の上を片付けてきれいにしなさい)

参考までに,ただの”clear your desk”だけだったら,机を洗って汚れを落とすような意味になる.

Keep out of this room!(この部屋に入るべからず)

Keep off the grass!(芝生に入るべからず)

She took out her raincoat.(彼女はレインコートを取り出した)

She took off her raincoat.(彼女はレインコートを脱いだ)

つまり,outというのは三次元関係を表し,動詞に「立体感のあるものの中から外へ」という意味を与える.それに対して,offというのは二次元関係を表し,動詞に「あるものの表面から離れて」という意味を与えるわけである.

ファーストフードの店の

Is this for take-out?(お持ち帰りですか)

という言い方と,飛行機に関しての

the moment of take-off(離陸の瞬間)

という言い方にも同じ「中から外へ」と「表面から離れて」との使い分けがはっきりと反映されている.

本書「日本人の英語」で繰り返し強調されているのは,英語という言語は極めて論理的であるということだ.前置詞にしても,冠詞にしても,その他にしても,一貫して同じ論理に基づいており,その論理さえ理解できれば,英語で表現することは難しくないという.日本人が日本語で書いた英文法の本には例外が多く登場するが,それは「執筆者が英語の論理を理解していないから」ということになる.

句読点の正しい付け方を覚えるために,コンマのことをカッコと考えたらよいと思う.

「私が去年受賞したノーベル賞はとても光栄でした」のような日本語を,コンマ抜き(限定的用法)で,

The Nobel Prize which I received last year was a great honor.

という英語に直してしまったら,それは今度受賞したノーベル賞は初めてではなく,自分は前にも受賞したことがあるということになる.しかも,その英語のニュアンスとしては,「前に受賞したやつはともかく,今度の場合は光栄です」というひびきも多少あるので,これは注意すべき点だと思う.いうまでもなく,非制限的関係節にして,次のように直せば意味は正しく伝わる.

The Nobel Prize, which I received last year, was a great honor.

ここでコンマについての指摘を持ち出したのは,最近ある大学教員が「コンマなんて読みやすくするためだけのもの」と言うのを耳にしたからだ.読みやすさもあるけれども,それは日本人が読みやすいかどうかではないし,そもそもコンマの有無で意味が変わることを忘れてはいけない.

thereby(by this specific action)とthus(in this general way)は,両方ともかっちりした英文に非常に大切な表現である.hence(for this reason/therefore)という言葉も論文にとてもふさわしい.

繰り返すが,本書は一読の価値がある.

なお,綺麗な英文を書きたいのであれば,”The Elements of Style”は手元に置いておくといい.良い例と悪い例を並べて,どういう英文を書くべきかを丁寧に教えてくれる.例えば,あなたはコンマ,セミコロン,コロンを正しく使い分けられるだろうか.自信がないなら,”The Elements of Style”だ.