7月 282011
 

続・日本人の英語
マーク ピーターセン(Mark Petersen),岩波書店,1990

ショックを受けた「日本人の英語」の続編.本書「続・日本人の英語」では,日本の映画や文学に多くの題材が求められている.日本近代文学を専攻した著者は,こう言う.

「悔しい」や「偉い」,「可愛い」,「優しい」などの,どう考えても一つの形容詞として英語の表現にならない日本語が私は好きである.

著者が書いているとおり,ただの続編ではない.随分と雰囲気が異なる.

本書では似て非なる表現が数多く取り上げられている.例えば,hearingとlistening,seeingとlookingとwatching.

“hearing”は,音が耳にはいること.「きこえる」と言うときは,”hear”を用いて,”listen”を用いない.”hearing”は,先方のことをこちらへききとること.”listening”は,きこうと思ってきくこと,こちらから先方をきく.

大まかに言えば,”seeing”は,目という”道具”でもって,あるものをvisual informationとして頭脳に入れることである.”looking”は,一応注意してみることではあるが,時間の経過をあまり感じない表現である.”watching”はまさに時間の経過して行く間,ものの変化を意識する,「観察」に近いことである.

この使い分けは習ったような気がする.他に,使役動詞のmakeとletとhave.

同じ「書かせた」とはいっても,英語の表現としては,

I made my mother write the letter.

I let my mother write the letter.

I had my mother write the letter.

の三つは,まるで「世界」が違う.

I made my mother write the letter.

というのは,いくらお母さんに嫌だと言われても,「無理やりに,強制的に書いてもらった」ということになる.要するに,

I forced her to write it – against her will.

ということになる.

“let”はその逆である.”let (someone) do (something)”は,単なる「させる」というのではなく,「することを許す」あるいは「することをゆずる」という意味が基本であるので,

I let my mother write the letter.

と言われたら,母に頼まれて娘が書かせてあげることにした,という場面などが浮かんでくる.要するに,

She wanted to write it, and I decided to allow her to do so.

ということになる.

“had”は,”made”と”let”の真ん中にあり,中立的な存在である.書くことに関しては,お母さんに嫌がられていたわけでもなければ,やりたがられていたわけでもない,ただ,なぜか「母に書いてもらった」だけというケースなら,

I had my mother write the letter.

と言ってもよい.ただし,”have (someone) do (something)”という表現は,多少ビジネスぽいニュアンスがあるので,身内の人に対しては,かならずしもふさわしい表現ではない.それに,何と言っても,”have (someone) do”は,「やってもらうのは当然だ」という事情を示すので,使い方がそれだけ限られている.

ん~,この使い分けは意識していなかった気がする.

「日本人の英語」に引き続き,本書「続・日本人の英語」でも,冠詞の使い方が取り上げられている.

“the Japanese”という表現には,すべての日本人を,一人残らず,一つのものとして取り上げて構わない,それぞれ個人の差があると思わなくてよい,という前提がある.この”the Japanese”という言い方は,ある種の修辞法にすぎないが,恐ろしいことに,ネイティブ・スピーカーの多くは,その言い方を無意識に使ってしまいがちである.しかも,逆に,同国人に関しては,アメリカ人は決してthe Americansとは言わない.

確かに,言われてみれば,そうか.意識したことがなかったが...

続編である本書もお勧めだ.

目次

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