8月 162011
 

逆システム学―市場と生命のしくみを解き明かす
金子勝,児玉龍彦,岩波書店,2004

今話題の児玉龍彦教授の著書「逆システム学」を読んでみた.自分がプロセスシステム工学という分野の研究者であるので,「逆システム学」という言葉に興味を持ったというのが理由だ.本書は児玉龍彦教授と金子勝教授との共著で,生物学と経済学の共通点を示しながら,複雑な対象を扱うための,従来の学問的枠組みの問題点を指摘し,逆システム学という新しいパラダイムを提示しようという野心的な著作だ.しかし,その目論見は失敗しているように思える.

まず,特に経済関連の記述において,フィードバックやフィードフォワードという学術用語が乱用されていると感じる.生物も経済も複雑なフィードバック制御で成り立っているということだから,著者に制御工学の素養があれば良かったのにと残念に思う.恐らく,フィードバック制御システムの安定性というモノが理解できていないのだろう.フィードバックなら安定で,フィードフォワードなら不安定という妄想が読み取れる.もちろん,私の誤読かもしれないが,制御屋に意味が分からないのに分かる人がいるのかは疑問だ.

従来の枠組みではダメだという主張はわかるが,結局,自説の開陳に終始しており,逆システム学のどこが新しいのかが理解できずに終わってしまった.

目次

  • 逆システム学とは何か
  • セントラルドグマの暴走
  • 制度の束と多重フィードバック
  • フィードフォーワードの罠――医学と経済学の逆システム学
  • 変化と進化における多様性と適応
  • どのようにしてパラダイムは転換してきたか