9月 152011
 

国立大学が独立法人化されてから,大学は産業界(または社会)に役立つような研究をすべきという雰囲気が強くなったように思う.この「役立つ」という言葉が一体何を意味しているのかが明確でないが,昨今の企業を見ていると,恐らく近視眼的な貢献(すぐに役立つこと)を主に意味しているのだろう.例えば,投資は少なくとも3年で回収できることといった具合に.それはどうかと思うものの,元々,「大学の研究者のくせに,あいつは何をやってるんだ?」という目で見られがちな産学連携(共同研究)を積極的に実施してきた私にとっては,研究をやりやすい雰囲気になったとも言える.

本日,計測自動制御学会のセレモニーがあり,日本学術振興会プロセスシステム工学第143委員会ワークショップNo.27「プロセス制御技術」の有志による「モデル不要PID調整法E-FRITの開発と実用化」の功績に対して,計測自動制御学会技術賞が贈呈された.改めて,受賞者を代表し,ワークショップのメンバーをはじめ,ご支援いただいた方々に感謝したい.

この受賞に関連して強調したい事実は,開発者(受賞者)が「企業4社5名と2大学3研究者」というところ,特に,企業が1社ではないという点だ.このような企業横断型産学連携あるいは産産学連携で,論文が書けるだけでなく,現場で実際に役に立つ顕著な成果を出せることを示せたことを大変嬉しく,また有難く思っている.

もちろん,研究開発の多くの分野では,複数企業が協調することは難しいだろう.自社を差別化できる製品や技術の開発が重要なのだから当然だ.しかし,そうではない分野はあり,積極的に技術交流を進め,技術を高める努力をすることは重要だと思う.現状に甘んじて学ぼうとしないような姿勢は論外であるし,実際,学ぶべきことはいくらでもあるはずだ.

ここで強調したいのは,学ぶ対象は同業他社に限定されないということだ.むしろ,異業種にこそ学びの種がある.ある産業で当然のことが,異なる産業では全く知られていないというのは,よくあることだ.ところが,他業種の技術にまでアンテナを張っている人は決して多くない.しかし,だからこそ,他業種に学ぼうとする姿勢は強みになる.ここ数年ほど,様々な講演で,実例を挙げながら,このことを強調している.

ここで重要だと考えるのが「場」だ.学ぶ場.共同作業する場.そういう場があるかないかは非常に大きな差となる.今回技術賞を受賞した「モデル不要PID調整法E-FRITの開発と実用化」にしても,場があったからこそ,この成果が生まれた.その場となった日本学術振興会プロセスシステム工学第143委員会は基本的に石油・化学産業を対象としており,同業の集まりという雰囲気がある.今考えているのは,全く異なる産業に属する企業の技術者が集まれる場を作ることだ.

最後に,今回,技術賞受賞という形で,技術開発に尽力していただいた方々に報いることができたことを本当に嬉しく思っている.もちろん,現場で成果を出すことを最優先して取り組んできたわけであり,実際に成果を出したわけだが,受賞は別の意味で社内評価を高めるだろうし,何より履歴書にも書ける.履歴書を書く機会はあまりないかもしれないけれども.

モデル不要PID調整法E-FRITは,さらに進化していきます.まだ利用したことがないというプロセス制御技術者の方々,要チェックですよ.

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