10月 222011
 

ミネアポリスで開催されているAIChE Annual Meeting(アメリカ化学工学会年会)に参加している.会期中に,ファイザーの本社採用(ローカルな日本採用ではなく)で,コネチカット州グロトンにあるPfizer Global Research & Developmentで研究をしている方に色々と話を伺った.お互いにQbD/PAT(Quality by Design / Process Analytical Technology)関連の研究に携わっているため,普段から交流がある.ファイザーに入社される随分と前からの知り合いでもある.

以下,度肝を抜かれた研究所のリストラについてメモしておく.

今年の春に,ファイザーは米国グロトンにある研究所の人員を半分にするという大リストラを実施した.この研究所は,米国と英国に1つずつあるファイザーの研究拠点の1つであり,ファイザー最大の研究所である.元々,グロトンの研究所だけで4000人程度の従業員がいたが,今や2000人程度に減っているそうだ.もちろん,英国の研究所も無傷ではすまない.

莫大な新薬開発費を投じながら,いっこうに経済的メリットの大きな新薬が生まれないため,新薬開発という博打から手を引きたいとファイザーは考えているのではないだろうか.新薬開発はベンチャー企業に任せて,見込みのある新薬が開発された時点で,その企業か薬を買収すればいいという経営判断なのかもしれない.

人員半減という凄まじいリストラを実行したファイザーだが,非常に興味深いのは,例えば10人→5人の人員削減を実行するときに,まず10人→3人の人員削減を実施して,次に2人を新規採用するということだ.ここに,流動性を重んじるファイザーの人材観が現れているのだろう.

以前にも書いたが,ファイザーの研究所では80%以上がPh.Dホルダー(博士)である.その他20%にはパートタイムの人達も含まれるので,研究者=Ph.Dホルダー(博士)だと認識してよい.つまり,ファイザーに博士でない研究者は存在しない.そこには,Ph.Dを持っていないと話も聞いてもらえないという現実がある.単なる大卒はもちろん,修士でも研究できるとは全く想定されていないということだ.日本のように,修士課程を修了した程度で研究者気取りというのはありえない世界がここにはある.

問題は,その大量のPh.Dが十分な成果をあげているのかということになる.必ずしもそうでもないから,ファイザーは大リストラを実行した.研究者が成果を挙げられない原因は,専門分野に閉じ籠もりがちで,視野が狭く,挑戦的でないということだ.なんか日本でもよく聴くような話じゃないか.

ちなみに,ファイザーの研究者の多くがケミストリーやバイオの専門家らしいから,引き籠もりがちなのも当然ということかもしれない.彼らには,製造プロセス全体を視野に入れた解析,制御,最適化等を考えよと言っても無理だろう.それこそ専門外だという話になる.しかし,だからこそ,真っ先にリストラの対象となったわけでもある.

ともかく,そんな大リストラの荒波を潜り抜け,精神的にもタフに,ファイザーの研究所で頑張っている日本人って凄い.ファイザーの研究所については昔書いたメモがあるので,興味ある人のために貼っておこう.

Pfizer Global Research & Development @ Groton/New London Laboratories

<以下,追記>

今回の大リストラが解雇される人に厳しいのは,前回のリストラほどの補償が行われないかららしい.詳しくは聞いていないが,少なくとも前回は,なんと年収3年分が支給されたそうだ.解雇された人は,それでもホクホク顔だったらしい.それだけで家が買えたのじゃないだろうか.

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