12月 102011
 

外国語上達法
千野栄一,岩波書店,1986

古い本だが,実に面白い.でも,書かれてある上達法は極めてまともなのだと思う.思うというのは,自分が外国語を習得できていないため,この上達法の良否を判定できないから.ちなみに,本書でいう外国語は英語に限定されず,チェコ語をはじめ,実に様々な言語が登場する.それがまた面白い.

最初に,グロータース神父のエッセイから,こんな言葉が引用されている.

さて,これまで言語について大学生たちに講義をする機会があるたびに,私はいつも「外国語をおぼえるコツを教えましょうか」と申し出たものです.学生は皆,喜んで鉛筆をもって構える.そこで私はおもむろに宣言します.「親を選ぶことです!」

こんなことを言われてしまうと絶望するしかないのだが,とにかく,本書で語られている外国語上達法の神髄に耳を傾けよう.

  • 外国語を習得しようとする場合,何語を何の目的で学ぶかをはっきり決めてかからないといけない,というのが第一の主張である.(中略)次に,習得したいと思う外国語が決まったら,その外国語をどの程度習得するつもりかの見通しをつけなくてはならない.読み書き話すという三つができるようになるまでには,言語の難易の差によって,三年から五年が必要になってくる.だから,必要でない言語を単に教養のためとかいって三つも四つもやることは,人生での大きなむだ以外の何物でもない.
  • 言語の習得にぜひ必要なものはお金と時間であり,覚えなければ外国語が習得できない二つの項目は語彙と文法で,習得のための三つの大切な道具はよい教科書と,よい先生と,よい辞書ということになる.
  • 外国語の習得に際して,語彙に関してはこれまであまり無視されていたので,もっと関心を持つ必要があり,語彙の習得にもっと計画的に時間をかけることが絶対に必要である.
  • 語学書は薄くなければならない.とりわけ,初歩の学習書はそうでなければならない.
  • まだ基礎語彙すら習得していない人が頁がまっ黒になるほどの単語を引きながら読むのは間違った学習で,辞書を引く指さきの神経は発達することがあっても,語学ができるようにはならない.
  • とりわけその言語が外国語であれば,母語の話し手が持っているレアリアに絶えず近づくことによってレアリアの量が増し,よりよくその外国語が理解できるようになるのである.そこでその外国語を支えている文化,歴史,社会…という様々な分野の知識を身につけておけば,それは外国語の理解の際に,まるでかくし味のようにあとから効いてくるのである.
  • よく考えて集められた例文や語彙をゆっくりと規則正しく覚えていくのが一番正しい学習法である.

本書「外国語上達法」で強調されているのは,外国語を習得したいのであれば,まず,基本的な単語を覚えなさいということだ.最低限必要な単語も知らないで,外国語を上達するも何もあったものではないと.もちろん,覚える単語は正しく選ばれていなければならず,頻出する単語から順に覚えるべきだと述べられている.詰め込み反対な人は再考した方が良いだろう.

さらに本書「外国語上達法」では,語学教師の資格についても書かれている.

語学教師にとっての第一の資格は,まずその外国語をよく知っていることである.教師の外国語の実力に対する学生,受講者の信頼は,授業が成立するための必要条件である.(中略)第二に,語学教師は教え方にたけていなければならない.たとえどんなによく外国語を知っていても,それを学習者に伝える技術を身につけていなければうまく伝わらないのは自明の理である.(中略)そして最後に,語学教師にとって一番大切なものは,語学教育への熱意と,学習者をひきつけずにはおかない魅力ある人間性である.これが欠けていては教壇に立つ資格がなく,これさえあれば時には語学力がいささか不足していようと,教え方にやや難があろうとカバーできる大切な資質である.

日本でも小学校から英語教育をするわけだが,これらの資格を満足している教師がどれだけいるのかと思うと,不安が募る.次のJ・トマン博士の言葉を読めば,尚更だ.

外国語を正しく学ぶための重要な前提になるのは,正しい発音の知識である.文法上での誤りをとんでもないミスと見なす人々が外国人を仰天させるような酷い発音で話すのに出会うのは,興味をひく事実としかいいようがない.しかもその際に,外国人は文法上のミスのある文の方を,ひどい発音で話された文よりもむしろ理解できるということをわきまえておく必要がある.

まあ,人様のことをどうこう言えるレベルにない私は,英単語でも覚えることから始めよう.

目次

  • はじめに―外国語習得にはコツがある
  • 目的と目標―なぜ学ぶのか、ゴールはどこか
  • 必要なもの―“語学の神様”はこう語った
  • 語彙―覚えるべき千の単語とは
  • 文法―“愛される文法の”のために
  • 学習書―よい本の条件はこれだ
  • 教師―こんな先生に教わりたい
  • 辞書―自分に合った学習辞典を
  • 発音―こればかりは始めが肝心
  • 会話―あやまちは人の常、と覚悟して
  • リアリア―歴史・文化を知らないと…
  • まとめ―言語を知れば、人間は大きくなる

  2 Responses to “外国語上達法”

  1. 私のおすすめの外国語学習についての本です。
    「わたしの外国語学習法 (ちくま学芸文庫) ロンブ カトー, 2000」

    こちらの本は16ヵ国語を習得した女性が書いています。私の仕事柄もあるのでしょうが、今の時代、母国語プラス英語は特別なことじゃなくなってきたなと感じます。16ヵ国語は少し目標が高い気がしますが、せめて2,3ヵ国語くらいはマスターしたいな、と思わせてくれる本です。何度読み返しても外国語を勉強したい気にさせてくれる本です。是非一度目を通してみてください。

    • 有美さん,おすすめの本を紹介していただき,ありがとうございます.
      16カ国語はともかく,外国語をマスターすると,海外旅行の面白さも変わりますから,2,3カ国語くらいはなんとかと思いますね.まあ,まずは英語だけでもモノにしないと話になりませんが.

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