1月 062012
 

今朝,ある学生と,就職や留学や研究の方向性などの話をしていたときに,研究者としての基盤を築くための勉強の仕方が話題になった.他の学生にも参考になるだろうから,私自身の勉強方法を紹介してみる.

誰かが本を読んで何かを理解したと言っても,私はほとんど信じていない.その人が理解した気になったことは認めるとしても,かなりの確率で,それは理解したのとは別物だ.理解した気になるのは比較的簡単だが,本当に理解するのは難しい.そして,自分が理解したかどうかを見極めるのも難しい.実際,理解するとはどういうことかを理解していない学生は多い.もちろん,学生が企業人になったら自動的に理解するとはどういうことかを理解できるわけではないので,企業人でも勘違いしている人は多いに違いない.

では,きちんと理解するためには,どうしたらいいのか.

私の場合,何かを勉強するときには,それについての解説を自分で書く.本を読んで理解した気にはなれても,きちんと理解できていなければ自分の言葉では説明できない.理解せずに解説を書こうとすれば,必ず詰まる.もし詰まらないとしたら,根本的に自分の言葉に対する理解と責任感がなさすぎるのだろう.そこまでレベルが低い状態は,ここでは対象から外すことにする.

何かを勉強して身に付けたいなら,解説を自分の言葉で書くのがよい.

私自身,どうして勉強のために解説を書くようになったのかと思い返してみると,私が修士課程在学中に,元ボスが手書きした解説資料をいくつか見たからだと思う.なるほど,このようにして勉強するものなんだと感じたのだろう.あるいは,元ボスから,解説を自分で書くようにと諭されたのかもしれない.記憶が定かではないが,とにかく,修士課程在学時以来,いくつもの解説資料を作成してきた.

今朝,雑談をしていた学生に見てもらおうと,書き溜めた自作解説を会議机の上に並べたところ,「固有値とジョルダン標準形」とか,「微分方程式と特性曲線」とか,「カルマンフィルタ」とか,「フィードバック制御下でのシステム同定」とか,15年以上も前に書いた懐かしい自作解説が出てきた.他には,分析機器の使い方をまとめた自作マニュアルなども.

もちろん,解説記事を書くのは簡単なことではない.理解したつもりになっていても,いざ書こうとすると,書けない.きちんと理解していないからだ.その都度,解説書を読み,それでもわからない部分を他書で調べ,微積分や線形代数などの数学書にまで遡り,何とか事典や何とかハンドブックを所狭しと広げて,徹底的に突き詰めて考える.そうして初めて,なるほど!と腑に落ちて,自分の言葉で説明できるようになる.

このように解説資料を作成していくことで,様々なことを自分なりにきちんと理解することができて,そして何より理解する方法が身に付いて,研究者としての自分の基盤が形成できたと思う.あの努力がなければ,研究は「砂上の楼閣」みたいなものにしかならなかっただろうとも思う.

そのようなわけで,大学院生には,自分の言葉で解説を書くことを勧めたい.

主要アドバイス一覧

勉強,レポート作成/論文執筆,研究発表/プレゼンテーションについて,主に卒業や修了を目指す学生へのアドバイスの一覧

(2015年1月15日リンク追加)

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