1月 222012
 

これまでの個人的な経験に基づいて,日本の大学には海外の大学のようなサバティカル制度(大学教員などが研究に専念するために一定期間与えられる長期有給休暇)がないと思っていたら,実は,予想以上にサバティカル制度のある大学が多いことを教えていただいた.恥ずかしながら,実は京都大学にもサバティカル制度があった.

所属している大学にサバティカル制度があるのに,制度の利用を勧められたことがないばかりか,その存在を通知されたこともないのが不思議だ.そんなことを思いながら,この機会に少し調べたので,簡単にまとめておこう.

京都大学では,2007年4月に「国立大学法人京都大学教員就業特例規則」が改正され,教員はサバティカルを取得することができると規定されたようだ.

(研修の機会)
第12条 大学は、教員の研修について、それに要する施設、研修を奨励するための方途その他研修に関する計画を樹立し、その実施に努めるものとする。
2 教員は、教育研究に支障のない限り、組織の長の承認を受けて、勤務場所を離れて研修を行うことができる。
3 教員は、教授会等の議に基づき、現職のままで、長期にわたる研修を受けることができる。
4 前項に定めるもののほか、教員は、教授会等の定めるところにより、研究に専念できる期間としてのサバティカルを取得することができる。

資料:
国立大学法人京都大学就業規則一覧
国立大学法人京都大学教員就業特例規則[PDF]

ただし,全学的に制度が導入されたわけではない.「平成18年度 経営協議会議事録 第13回 平成19年3月28(水曜日)開催」には,平成19年度国立大学法人年度計画(案)に関して,サバティカルに関する質問に対する大学側の回答が以下のように記載されている.

サバティカル制度については、各部局の責任において導入することができるよう規程の整備を行った。平成18年度には文学研究科、教育学研究科、経済学研究科、医学研究科で実施しており、平成19年度には、法学研究科が実施の予定である。

サバティカル制度は、一定期間勤務した教員には制度を利用する権利がある。諸外国では周期的に教員が制度を活用しており、教育に支障をきたさない体制が整備されている。実施している京都大学の各研究科においては、同制度の活用により増加する講義及び管理業務について、教員相互の協力体制を整え対応している。

要するに,部局ごとの責任で実施しろということだ.そして,実施部局の中に工学研究科の名称はない.少なくともこの時点では,医学研究科を除いて,文系部局でしか実施されていないことがわかる.

平成21年度国立大学法人京都大学年度計画」[PDF]には,「研究実施体制等の整備に関する目標を達成するための措置」として,

サバティカル制度を活用して、教育研究活動の活性化や質的向上に努める。

と,また「人事の適正化に関する目標を達成するための措置」として,

部局等の特性に応じ、サバティカル制度等を活用して教員に実務経験を含む研修の機会を与え、その資質向上を図るよう努める。

と明記されているので,少なくとも京都大学はサバティカル制度の活用に積極的であるとのポーズを示している.

しかし,その意気込み(あるいはポーズ)と実態の乖離は甚だしい.2010年6月に京都大学が出した「平成21事業年度に係る業務の実績及び中期目標期間に係る業務の実績に関する報告書」[PDF]には,サバティカル制度の実施状況が以下のように記載されている.

(平成20年度の実施状況概略)
各部局の特性に応じ、サバティカル制度を利用することで、教育研究の活性化や質的向上に努めている(平成20年度利用教員数:8名)。また、制度を導入していない部局においても、具体的な導入に必要な検討事項等の検討を行っている。

(平成21年度の実施状況)
「国立大学法人京都大学教員就業特例規則」を改正し、各部局の長の承認、教授会等の議または定めにより、教員はサバティカルを取得できることとしている(平成19年4月)。現在、部局の特性に応じて10部局でサバティカル制度を導入し、教育研究の活性化や質的向上を図った(平成21年度利用教員数:3名)。なお、制度を導入していない部局においても、導入に必要な事項や手続き等を検討しているほか、研究上の必要に応じ一定期間の組織運営業務を免除するなどの措置を取っている。

つまり,京都大学全体で平成20年度にサバティカルを利用した教員は8名,翌21年度には3名しかいない.京都大学の規模を考えれば,事実上,サバティカル制度は機能していないと言える.

その上,私が現在所属している工学研究科に関する情報が見当たらない.このことをもって工学研究にはサバティカル制度がないとは言えないが(週末のため未確認),実施していれば声を大にして喧伝していそうなものだ.

さらに,サバティカルに関しては,制度があっても実際に利用可能かどうかは別問題だ.現在のように教員数が削減され続ける状況では,サバティカルで教員が抜けた穴を埋めるのは容易でない.それに,「俺が行っていないのに若いのが行くのはけしからん」と言い出す年配教授がいないとも限らない.特に小講座制を採用している組織でそのような傾向があるかもしれない.

ともかく,海外の研究者を間近に見ていて,サバティカルは必要と強く感じる.半年から1年を海外の研究機関や企業で過ごせば,その経験は教員を大きく成長させ,日本の大学のレベルを向上させるのにも貢献するに違いない.それに,仮に何の役に立たないとしても,私はサバティカル制度を利用して海外に行きたいし,若手研究者を海外に行かせたい.つまり,何としてでも,実行可能な形で制度化するべきだ.

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