2月 162012
 

マックス・ウェーバーは「職業としての学問」で,「私講師や研究所助手が他日正教授や研究所幹部となるためには,ただ僥倖を待つほかはない(中略)これほど偶然によって左右される職歴はほかにないであろう.」と述べています.これは100年近く前の講演録ですが,状況は現在もそれほど変わってはいないでしょう.

私が今あるのは,私の実力のおかげなどではありえません.教授になれたのも,幸運に恵まれ,巡り合わせがよかったからにすぎません.もちろん,公募で採用される程度には研究業績を挙げるために,時間と労力を費やしてきました.しかし,そうだからといって,自分だけの力で教授になれたなどということはありえないわけです.

京都大学に入学できたのも卒業できるのも,自分の力だけでなんてことはありえません.もちろん苦労も努力もしてきたことと思います.それでも,親,家族,友人,先生,その他,自分を取り巻く諸々の環境に恵まれて,今の自分があることを忘れてはいけないでしょう.

就職活動は非常に厳しく,大企業の正規社員になれる人なんて,ほんの一握りしかいません.それでも,ここにいる学生の多くは,京都大学化学工学専攻という看板のおかげもあって,比較的簡単に就職を決めることができたはずです.各社において卒業生がどれだけ支援してくれたか,親や先生がどれだけ気にかけてくれたかを,決して忘れないで欲しいと思います.

君達は,いや私達は,それだけの幸運に恵まれているわけです.だからこそ成功してきたし,これからも成功していくでしょう.そのような幸運に感謝し,成功に伴う責任を果たさなければなりません.そのように自覚しなければならないと思うのです.それがノーブレス・オブリージです.

「論語」には,「命を知らざれば,以て君子たること無きなり」という孔子の言葉が記されています.天命を知れということです.吉田松陰は「君子に貴ぶ所のものは志のみ,胆のみ.胆なく志なくんば,則ち区々の才知将た何の用か之れを為さん」と言いました.頭がいいといっても,志がなければ何の意味もないということです.これからも,志を持って人生を送って下さい.

自分が恵まれていることを自覚し,そのことに感謝して,ノーブレス・オブリージを果たすべく,責任感のある行動によって,幸せになってもらいたい.そう願っています.

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