8月 262012
 

国際会議で酷いプレゼンテーションをしないための秘訣(コツ)を紹介します.

初めて国際会議で発表する大学生や大学院生,さらには,十分な修行を積むことなく企業に入り,学会発表をする羽目になった技術者や研究者にも,お役に立てればと思います.

学会の公用語が日本語でも英語でも,学会発表の基本原則は変わりません.このため,まずは「学会発表や卒業研究発表の前に読みたいプレゼンテーション・アドバイス」を読んで下さい.その内容を修得したという前提で,ここでは,国際会議の晴れ舞台で,英語が苦手な日本人が英語で発表する際に気を付けたいことをまとめておきます.

短い文を使う

関係代名詞や関係副詞が何重構造にもなったような複雑で長い文章を,下手な英語で話されたら,聴衆が理解できるはずありません.文を分割できるところは分割し,短い文を使うように心掛けましょう.文語と口語は違うということを忘れずに.論文に書いた文章をそのまま読むと,非常に堅苦しく,聞きにくい発表になります.

正しい英文の書き方を身に付けたいと思うなら,”The Elements of Style”などを読むと良いでしょう.間違っても,英語が上手でない日本人が書いた解説本なんかを読むべきではありません.

文を正しく区切る

長い文章を話すときには,どこかで息継ぎが必要になります.このとき,息継ぎの場所に注意しなければなりません.副詞節の前後で区切るなどは分かりやすい規則ですが,とにかく,聴衆が聞きやすいように区切ることが原則です.慣れるまでは,原稿に区切りを書き込むようにしましょう.

正しいアクセントで話す

英語を話すときに,日本人は発音を非常に気にしてしまいます.確かに,”R”と”L”のように,日本人が不得意と国際的に認められている発音もあり,気になるのは仕方ないことです.しかし,一朝一夕で綺麗な発音ができるようになるはずもありません.それよりはむしろ,アクセントに気を付けるべきです.特に,普段からカタカナで利用している単語には要注意です.辞書でアクセントの位置を確認する習慣を身に付けましょう.発音を気にするのは,その後です.実際,アクセントの位置を間違えると,正しい発音でもネイティブな人は理解できないのですから.

結局,下手な英語をカバーするためには,ハッキリと話すしかありません.ただし,ハッキリ,ゆっくり話すというのは,単語ごとにバラバラに話すのとは全然違います.日本語で,「こ・れ・が・け・っ・か・で・す」とロボットみたいに話すと,非常に聞き取りづらいはずです.英語でも滑らかさが重要ですので,ハッキリかつ滑らかに話せるように徹底的に練習しましょう.

最初と最後

国際会議の発表において,最初と最後に言う言葉は概ね決まっています.

最初は,”Thank you, Mr. Chairman. Good morning, ladies and gentlemen.”みたいな感じで切り出します.”Chairman”というのは自分が発表するセッションの座長(司会者)で,発表者の紹介などをしてくれます.発表を始めるに際して,一言お礼を述べるのが礼儀です.

最後は,”Thank you for your kind attention. I am happy to answer any question that you might have.”みたいな感じで終わります.くれぐれも,終わったのか終わってないのか分からないようなフェードアウトはしないようにしましょう.

さらに,結論を述べた後,締め括りの言葉の前に,謝辞を述べましょう.謝辞とはお礼のことです.論文の共著者以外で研究に協力してくれた人や研究組織,研究資金を提供してくれた団体などが対象です.述べるべき相手が誰もいない場合は構いませんが,いるなら必ず謝辞を述べましょう.どうも日本人は謝辞を軽視しすぎる傾向にあります.しかし,それは不作法な行為です.礼儀正しくあって下さい.

さいごに

繰り返しますが,ここに書いたことは,「学会発表や卒業研究発表の前に読みたいプレゼンテーション・アドバイス」に書いた内容を修得したことを前提に,それに付け加えて気を付けるといいと私が思うことです.まずは,学会発表の基本を身に付けるようにしましょう.

主要アドバイス一覧

勉強,レポート作成/論文執筆,研究発表/プレゼンテーションについて,主に卒業や修了を目指す学生へのアドバイスの一覧

(2015年1月15日リンク追加)

話し方入門
デール・カーネギー,創元社,2000

プレゼンテーションや話し方に関する書籍で,私が最高だと思い,自信を持ってお勧めするのが,この「話し方入門」です.人前で上手に話すための秘訣が書かれています.もちろん,単なるハウツウではありません.人に伝えたいと切望するものがあること,周到に準備をすること,練習に練習を重ねて自信を持つこと,始め方と終わり方に注意すること,わかりやすく話すこと,そして,美しい言葉を身に付けることなどが挙げられています.人前で話すことの重要性を認識し,上手に話せるようになりたいと願う人にはきっと役立つはずです.

マッキンゼー流 プレゼンテーションの技術
ジーン・ゼラズニー,東洋経済新報社,2004

研究発表向けの書籍ではありませんが,ビジネスでプレゼンする機会が多い,ビジネスにおけるプレゼン能力を磨きたい,というのであれば,この「マッキンゼー流 プレゼンテーションの技術」を読むと良いでしょう.プレゼンには人を動かすという目的があるはずであり,その目的を達成するために,プレゼンテーションに不可欠な要素は何かということが書かれています.このため,もちろん研究発表にも役立ちます.このようなノウハウの蓄積は,さすがマッキンゼーといったところでしょうか.

スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン―人々を惹きつける18の法則
カーマイン・ガロ(著),井口耕二(訳),日経BP社,2010

プレゼンテーションをうまくなりたいなら,つべこべ言わずに,本書「スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン」を読め!と言いたくなる本です.アップルのファンを熱狂させただけでなく,プレゼンの手本として絶賛されたスティーブ・ジョブズのプレゼンを分析し,その成功の秘訣をわかりやすく解説しています.実際,私は,本書を読んだ直後に,ある講演用のスライドをすべて書き換えたほどです.本書で強調されている点は次の3点です.第1に,プレゼンで伝えようとするモノに情熱を持つこと.第2に,聞き手が興味あることを,わかるように伝えること.第3に,練習し,練習し,そして練習すること.

LOGICOOL プロフェッショナルプレゼンター タイマー機能・LCD搭載 R80

手元のボタンで,ページ送りなどパワーポイントの操作もできる,明るいグリーンレーザーのポインターとしては,非常にコストパフォーマンスが良く,使いやすいレーザーポインターです.2012年現在,私はこれを愛用しています.

8月 192012
 

1~2週間程度,お客さん待遇で大学生や大学院生が企業に滞在するインターンシップに大した価値はないと思っている.ただ,インターンシップは無意味だという意見を聞くと,それは素晴らしいインターンシップを知らないだけではないかとも思う.

もう10年も前の話になるが,私が参加させていただいたプラクティススクール(以下PS)について紹介したい.PSは米国マサチューセッツ工科大学(MIT)化学工学専攻の博士後期課程・修士課程用プログラムであり,学生は2ヶ月間に及ぶ企業でのプロジェクトに計2回(合計4ヶ月)参加する.日本の大学院に無理矢理あてはめると,修士論文を書くくらいの重要なプログラムと見なされている.詳細は,Practice School – David H. Koch School of Chemical Engineering Practiceを参照していただきたい.学生を受け入れるスポンサー企業リストには,BASF,BP,GSK,Merck,Morgan Stanley,Novartis,Pfizer,Shell等,世界的に有名な企業が並んでいる.

PSの歴史は古く,1916年に設置されて以来,多くのMITの学生を世界各地の企業に送り込んできた.日本国内にもスポンサー企業がある.それが三菱化学だ.詳細は,Practice School – International Hostsを参照していただきたい.現在は,横浜の研究所で東京大学が実施しているだけのはずだが,以前は水島事業所でも実施していた.私が参加させていただいたのは,その三菱化学水島事業所でのPSだ.

2001年8月,三菱化学のご好意により,プロセスシステム工学研究室(私の旧所属研究室)の学生4名が夏休みの1ヶ月間を利用して,PSに参加させてもらえることになった.本来,PSは2ヶ月で1プロジェクトを実施するが,京都大学から2ヶ月間派遣するのは困難であったため,1ヶ月のプロジェクトとしていただいた.各学生はMITの学生2人とグループ(1グループ3人)を組み,1ヶ月間でプロジェクトを成し遂げなければならない.しかも,そのプロジェクトというのは,インターンシップ用のプロジェクトごっこではなく,本気である.先述のPractice School – International Hostsには,三菱化学でスポンサーとなった部署の75%が技術的進歩や教育効果があったとし,さらに,30%が実際にブレークスルーがあったと報告していると紹介されている.

これだけの成果を残せるPSプログラムと,日本でありがちなインターンシップとの差は何か.詰まるところ,それは,企業と大学の覚悟の差だと思う.実際,PSに投入されるリソースは半端でなかった.まず,MITは,PS専任教員を雇用し,PS期間中,教員とポスドクの計2名を学生と共にスポンサー企業に常駐させる.教員はプロジェクト選定に責任を持ち,PS実施の半年ほど前から,スポンサー企業と協力してプロジェクトの選定を行う.スポンサー企業が本気でブレークスルーを望み,2ヶ月間(MIT-京大PSの場合は1ヶ月間)で成果が見込まれ,かつ教育効果が高いと判断されるプロジェクトが選ばれる.スポンサー企業は,スタッフと学生の受入費用を全額負担する他,企業が持つありったけのリソースをPSに提供する.正社員と同様,各学生にデスクとパソコンが与えられ,プロジェクト遂行に必要なソフトウェアも用意される.社内情報にアクセスできることは勿論,必要なら別の国内事業所へ出張して実験も行う.プロジェクトを提案した部署の担当者は,学生と常に情報を共有し,あらゆる質問に答え,便宜を図る.双方がこれだけのことをするからこそ勝ち取れる成果がある.今,日本で実施されている多くのインターンシップとは全く次元が異なるのではないか.

三菱化学から正式に募集案内が来たときには,「こんな良い機会はないから,何としてでも応募しろ!」と学生を焚き付けた.しかし,英語を自在には使えない学生にとって,かなり辛い経験になるだろうとも思っていた.研究室の学生の問題解決能力を高く評価してはいたが,求められる作業のスピードと質が,彼らが未だかつて体験したことのないレベルであろうと予想されたからだ.英語も大きな障壁となるに違いなく,MITの学生が夜中まで作業するなら,英語ができない日本人学生は徹夜して追いつくしかない.それだけの覚悟をして,学生も私も参加した.

1ヶ月間のプロジェクトは次のように進んだ.MIT学生2名と京大生1名とで1つのグループを構成する.初日に,スポンサーからプロジェクトについての説明があり,目的や課題が示される.与えられた資料に目を通し,数日で最初の報告会を迎える.そこで,MIT学生Aがスポンサーに対して方針を表明する.この後,本格的な作業に入り,2週間が経過したところで中間報告を行う.その担当は京大生だ.最後に最終発表会でMIT学生Bが成果報告を行い,報告書を提出して,プロジェクトは終了となる.

私は1ヶ月ずっと参加することはできず,一足遅れて合流し,中間報告会終了まで現地に滞在した.その間,MITのスタッフと学生,そして当研究室の学生がプロジェクトに取り組む様子を見て,いろいろなことを感じた.そのいくつかを,ここで述べることにする.

何よりもまず,最も驚かされたのは,研究室の学生が中間報告会で素晴らしいプレゼンテーションを行ったことだった.プロジェクトを開始してから僅か2週間で,充実した内容の発表を英語で堂々と行えたのだから,素晴らしいとしか言いようがない.MITのメンバーからも高い評価を受けて,大きな自信になった様子だった.もちろん,その発表のために,連日早朝から深夜まで必死に準備をしたのだから,その努力が報われたと言える.「成功体験が人を育てる」と言われるが,PSでの体験はまさに成功体験の1つとなり,彼らを大きく成長させたに違いない.

実際,中間報告会の前は悲惨だった.三菱化学の独身寮に滞在させていただき,8時前に自転車で出社,夜8時頃までは会社で全力で(しかもMITの学生と英語で議論しながら)作業をし,寮に戻って夕食を済ませると,そのまま食堂を会議室代わりにして,深夜まで現状把握と方針確認のための議論,それにスライドと原稿の作成.発表前には,もう学生は気力と体力の限界に達していただろうと思う.本当にハードな生活だった.

一方,MITの学生に関しては,いろいろな面で驚かされた.まず感心したのが,最初の報告会だ.僅か数日しか時間がないにもかかわらず,論文だけでなく特許まで調べ上げて,課題解決のための方針をまとめていた.京都大学の普通の大学院生(修士課程)なら,専門分野以外のテーマだと1日に英語論文1報を読むのが精一杯だろう.英語力が大きな問題ではあるが,文献調査もよく鍛えられていると感じた.さらに,化学工学の基礎知識をしっかりと身に付けていた.流石,学生には寝る間もないくらい勉強させると教員が断言する米国トップクラスの大学院だ.テスト前だけ勉強したら十分だと多くの学生が思っているような大学との差を見せつけられた.また,基礎知識に限らず,各種ソフトウェアの活用など,困難なプロジェクトを遂行する上で不可欠な能力も身に付けていた.残念ながら,平均的な京大生では到底太刀打ちできないと思われる.平均的な大学生なら,なおさらだろう.もちろん,全員が完璧なまでに優れているというわけではない.いろいろと至らない部分はあるわけだが,スタッフが適切なアドバイスを与え,励まし,指導を行っていた.PSは実に優れた教育プログラムであると感じた.

私がインターンシップと聞いて思い浮かべるのは,このMITのプラクティススクールだ.これだけの成果を実際に叩き出すプログラムを無駄だなどとは言えないだろう.もし無駄なら,100年近くもMITが続けたりしない.残念ながら,日本でこれだけのプログラムを実施できる企業や大学がどれだけあるだろうかと思うと,そこに大きな壁を感じてしまう.しかし,実現を目指す価値はあるだろう.

8月 022012
 

8月は大学院入試シーズンなので,ロンドンオリンピックを気にしながらも,研究室で,図書館で,あるいは自宅で,受験勉強に取り組んでいる4回生も多いだろう.

大学ごとに問題が作成される大学入試とは異なり,大学院入試は専攻単位で実施される.受験科目も専攻ごとに千差万別で,かつ同じ科目であっても,専攻の特徴を反映した癖のある問題が出題される傾向が強い.さらにハッキリと言えば,誰が出題するかで出題範囲が絞り込まれるし,誰が出題するかは簡単に予想できる.このため,受験対策としては,過去問を入手して解いてみることが極めて重要になる.このことについては,「大学院入試(他大学大学院への進学)」でも述べた通りだ.

しかし,学部の期末試験のように,合格できるギリギリの点数でよいと考え,出題範囲に山を張り,過去問を解く作業のみを繰り返して,その解法や公式を覚えるだけの試験対策で満足してしまわないようにして欲しい.大学院入試は,学部3年間で学習した内容を総括し,断片的になってしまっているかもしれない知識を互いに結び付け,その分野の専門家を名乗るのに最低限必要な能力を身に付ける絶好の機会だと思う.だからこそ,各分野の本質をしっかり勉強して修得してもらいたい.

大学や大学院で勉強したことが,将来の自分の資本となる.今ここで勉強しておかないと,将来,自分は何のために大学や大学院に進学したのかがわからなくなってしまうかもしれない.就職後,何の武器も持たず,丸腰で闘う羽目にもなりかねない.

過去問に頼ることの危険性を1つ補足しておくと,出題傾向は突然変わることがありえる.山を張るのも1つの方法ではあるが,その危険性は十分に認識しておくべきだろう.