9月 142012
 

京都大学の財務報告書2012が配布されてきた.詳細に興味がある人には財務報告書を読んでもらうとして,社会,学生,教職員の立場から,京都大学の現状を把握するのに役立つ情報を抜粋してメモしておこう.

国民1人あたりの負担

京都大学に対する国民1人あたりの負担額=773円.

計算式は次の通り.

(業務実施コスト799億円+受託研究・受託事業等31億円+科学研究費補助金等145億円)/人口1.2618億人.

学生1人あたりの教育関係経費

学生1人あたりの教育関係経費=174万円.

ちなみに,学部と大学院(法科を除く)の入学料は28.2万円,授業料は53.58万円となっている.授業料で計算すると,学生が支払う授業料の3倍もの経費をかけて,京都大学は学生を教育していることになる.「授業料を払ってるんだから・・・」という学生の主張はたいした説得力を持たない.どうしてもそれを言いたいなら,2/3を支払っている社会に対する自分の責任を自覚してからにした方がいいだろう.

教員1人あたりの研究関係経費

教員1人あたりの研究関係経費=1945万円.

計算式は次の通り.

(経常費用等62036百万円+研究用資産支出額12216百万円)/教員3817人.

経常収益と経常支出

経常収益と経常支出は1450億円.

収益の内訳: 運営費交付金36%,学生納付金10%,付属病院収益22%,外部資金17%,その他15%.

支出の内訳: 人件費46%,教育4%,研究16%,診療14%,教育研究支援2%,受託研究費等14%,一般管理費3%,支払利息1%.

ざっと以上.ここでは京都大学の財務について紹介したが,これが国立大学法人の平均的な姿でないことは指摘しておきたい.

日本の高等教育への公的支出額は対GDP比でOECD加盟国中最底辺と悲劇的だが,それでも国民に支えられているわけで,その自覚は必要だと思う.教職員も学生も.

9月 142012
 

長良川国際会議場で開催された国際会議IFAC MMM 2012の第一日目夕方,ソーシャルイベントとして,ぎふ長良川の鵜飼を観に行った.会議場に接続している岐阜都ホテルから,チャーターしたバス2台で鵜飼観覧船のりばへ.観覧船も2隻を借り切り,AグループとBグループに分かれて乗船.

外国からの参加者も多いため,ボランティアの通訳の方2名に協力していただいた.2人とも浴衣姿で風情があった.日本の夏が感じられる.

鵜飼観覧船に乗り込む学会参加者@長良川
鵜飼観覧船に乗り込む学会参加者@長良川

日本における鵜飼の歴史は古く,日本書紀や古事記にも登場しているという.

長良川の鵜飼はおよそ1300年前から行われており,かつては鵜飼漁の職人を鵜飼屋と呼んでいたそうだ.戦国時代になり,岐阜城を落とした織田信長が鵜飼を見物して感銘し,「鵜匠」と名付けたという.その織田信長や,鮎鮨を好んだ徳川家康らに保護されてきた鵜飼だが,明治維新以降は保護がなくなり,21人いた鵜匠も今では6人のみという.なお,長良川の鵜匠は世襲で,明治23年からは宮内庁式部鵜匠が正式職名となっている.つまり,国家公務員だ.

解説が面白い船頭さんと通訳のお姉さん@ぎふ長良川鵜飼
解説が面白い船頭さんと通訳のお姉さん@ぎふ長良川鵜飼

鵜飼観覧船は18:30頃に出船し,鵜飼観覧ポイントへと向かう.鵜飼開始は19:30頃で,開始を告げる花火が打ち上げられるまで,ビールを飲んで,お弁当を食べる.鮎も入っている豪華なお弁当だったが,塩焼きは焼きたてがいい.前日夜に食べた川原町泉屋の鮎が非常に美味しかっただけに,落差が大きかった.

鵜飼が始まるまで,そして始まってからも,鵜飼観覧船の船頭さんが鵜飼について説明をしてくれる.今回は通訳の方も乗船していたので,船頭さんがまず説明をして,それを通訳してもらうというスタイルだった.ところで,この船頭さんの解説が秀逸だった.とても面白い.そもそも,鵜も鮎も鵜飼も何もかも知らないことだらけなので,いちいち「おぉー,なるほど~!」と感心してばかり.参加者みんなが絶賛していた.

船頭さんの解説を1つだけメモしておこう.

鵜って何でも飲み込むんです.鮎だけじゃなくて,フナもコイも,ウナギも.で,ウナギを飲み込むのは難儀するんですね.鵜が難儀するからウナギ.という説もあるようですよ.あ,でも,これ,鵜呑みにはしないで下さいね.

これを通訳しだすお姉さんも凄かった.いや,もう,大満足.

ぎふ長良川の鵜飼
ぎふ長良川の鵜飼

花火が上がって,鵜飼が始まると,まず,「狩り下り」が行われる.狩り下りとは,鵜船1隻に鵜飼観覧船1隻が並走して川を下ることで,鵜匠による鵜飼を間近で見ることができる.篝火(かがりび)を灯した鵜船では,鵜匠が「ほう~ほう~」と声を掛けながら,最大12羽の鵜を自在に操り,鮎を狩る.

狩り下りをしながら,鵜飼について鵜匠が説明をしてくれる.鵜匠と鵜は長いものだと30年以上も寝食を共にするため,お互いを信頼しあっているのだという.まさに以心伝心状態なのだそうだ.また,狩れた鮎を見せてくれたりもする.Aグループの我々は,小さな鮎しか見られなかったけれども.

ぎふ長良川の鵜飼
ぎふ長良川の鵜飼

「狩り下り」の次は「総がらみ」で,鵜船6隻が横隊となり,一斉に鮎を浅瀬に追い込んでいく.総絡みは遠くから眺めるだけのため,狩り下りの方が興味深かった.

鵜飼が終了すると,鵜飼観覧船も鵜船も停泊し,鵜は鵜船の縁で羽を休める.篝火に近いほど羽が良く乾くので,鵜は年功序列で並ぶそうだ.若い鵜が順番を間違えると,他の鵜に突かれるらしい.

鵜船の縁で休む鵜@ぎふ長良川
鵜船の縁で休む鵜@ぎふ長良川

長良川の鵜匠は,生まれて1~2年の若い野生の海鵜を茨城県日立市十王町で捕獲し,一緒に過ごしながら,一人前に育て上げる.鵜飼のシーズンは5月から10月までの約5ヶ月間だが,鵜匠は一年中,鵜と生活を共にし,まさに鵜飼一筋なのだという.

鵜飼を観るのは今回が初めてであったが,非常に楽しめた.とにかく,一度は見ておいたら良い文化だと思う.実際,長良川の鵜飼用具は国の重要有形民族文化財に指定されている.

ところで,特に海外からの客人が多いということで,今回,船頭さんはじめ関係者が心配されていたのは,鵜飼が動物虐待と捉えられないかということだった.そうではないことを理解してもらうために,説明は非常に丁寧で,この点は強く印象に残った.