1月 302013
 

製剤技術,特に近年注目されているRTRt(Real Time Release Testing),QbD(Quality by Design),PAT(Process Analytical Technology)を主要テーマとする国際会議IFPACに参加してきた.会議の概要と感想を簡単にメモしておく.

名称:IFPAC 2013 – 27th International Forum and Exhibition Process Analytical Technology (Process Analysis & Control)

期間:2013年1月22-25日

場所:Baltimore Marriott Waterfront, Baltimore, Maryland, US

IFPACは毎年1月に極寒の米国ボルティモア(ワシントンの北)で開催される.こんな北方の都市で真冬に会議を開催しなくても,カリフォルニアやフロリダで開催すればいいじゃないかと思っているのは私だけではないはずだ.しかし,規制当局との関係が重要である製薬業界にとっては,米国FDA(U.S. Food and Drug Administration)の拠点近くで学会を開催することで,FDAから多くのスタッフに参加してもらうことが大切なのだろう.

今回の参加者は640人(事前登録)で,そのほとんどを製薬企業および関連するハードウェア・ソフトウェア企業などが占める.その他,FDAからの参加も多く,IFPACは製薬企業と規制当局が意見交換をする重要な場となっている.

参加者数と発表件数が共に多いFDAに加えて,欧州のEMA(European Medicines Agency)からも発表があるのに対して,日本の規制当局であるPMDA(医薬品医療機器総合機構)の存在感は極めて薄く,「PMDAは何を考えているのかわからない」という不満を共有している関係者は少なくないようである.

米国も含めて大学からの参加者は少なく,最先端の研究内容を発表するための会議というよりは,企業と規制当局が情報収集や意見交換を行うための会議という印象が強く,発表内容も概念的なものや申請に関するものが多い.例えば,新しいモデル構築方法を開発して予測精度が飛躍的に改善したという研究発表があると,その方法の詳細以上に,規制当局が求める妥当性検証はできるのかといったことが問題にされる.このようなところに,医薬品産業の特殊性と研究対象としての難しさが現れている.

技術の方向性としては,とにかくPATと称して重要品質特性を予測してみるという段階は終わり,リアルタイムモニタリングやプロセスコントロールに焦点が移っている.会議中に多変量統計的プロセス管理(MSPC)やモデル予測制御(MPC)といったプロセス制御分野では馴染みの言葉を頻繁に耳にした.特に,会議前ワークショップのテーマがSPCであることからもわかるように,各種製剤工程へのMSPCの適用が重要な課題となっている.なお,議論されている技術は古典的で,手法そのものに新規性はないが,実際に使用して成果をあげることが目標となっている.これは重要なことだ.理論が整備されていても,実際に使えないならメリットは生まれない.その他,バッチプロセスから連続プロセスへの転換も引き続き重要なテーマとなっている.

メガファーマにおけるQbD/PAT技術の現状を知る,規制当局と意見交換する,展示会で情報収集する,という観点からはIFPACは素晴らしい会議であるが,他分野でも活動している一研究者としては,何かと不満のある会議でもある.

何よりもまず,運営が実に適当臭い.アカデミック向けの会議参加費が明示されておらず,今回は事務局とメールで遣り取りして価格が決まった.その上,会場で受付をしようとすると,「参加費が支払われていない」と文句を言われ,潔白が証明されるまで待たされた.また,ホテル宿泊代金や食事代金が会議参加費に含まれているため,延泊を学会事務局を通して申し込んだのだが,ホテルに間違った情報が伝えられていた.

企業や規制当局からの発表がほとんどであり,それらを促す必要があるため,論文の投稿は求められておらず,要旨だけで発表が認められる.中には,要旨すら提出していないものもある.このため,先にも書いたとおり,概念的な発表が多く,似たような内容が繰り返し発表される.新しい技術を紹介するものも玉石混淆であり,分析装置メーカーやソフトウェアメーカーの宣伝に近い発表もある.

良いところは,朝から晩まで,スターバックスコーヒーが飲み放題で,パンやお菓子も食べ放題になっているところだ.食事も学会参加費に含まれているため,本当に缶詰状態での学会参加となる.セッション開始は朝7:30頃で,昼食を挟んで,夕方18:00頃までセッションがあり,夕食後にもセッションがあるといった具合だ.

日本からの参加者は15名程度で,ほとんどが製薬関連企業からの参加である.開催国であるアメリカを除くと,日本からの参加者数の多さは目立っていたように思う.実際,開会挨拶でも日本からの貢献について触れられていた.ただし,発表件数は少なく,PMDAからの参加もないため,存在感は希薄だったと言わざるをえないだろう.

今回のIFPAC会期中に,製剤機械技術学会PAT委員会のメンバー4名(製薬企業3名+加納)はCAMO(Unscramblerの開発販売)とのディナーミーティングに参加し,意見交換を行った.この4名はIFPAC終了後にThe Duquesne University Center for Pharmaceutical Technology(DCPT)を訪問した.これに関しては別のメモにまとめる.

ボルティモアで一番クラブケーキが美味しいらしい店に招待していただき,そのクラブケーキをいただいた.確かに美味しかった.もちろん,アメリカのレストランなので,ボリュームは満点だ.さらに,食後のデザートに燃えるアイスクリームケーキを注文していただき,皆で少しずついただいた.当然ながら,大人6人でも食べきれない.

燃えるアイスクリームケーキ@CAMOディナーミーティング
燃えるアイスクリームケーキ@CAMOディナーミーティング

生クリームの内部はミントアイスクリーム@CAMOディナーミーティング
生クリームの内部はミントアイスクリーム@CAMOディナーミーティング

さらに翌日のセッション終了後には,Umetrics(SIMCAの開発販売)に日本人参加者向けのセミナーを開催していただいた.日本人参加者は私が事前に把握していた13名で,Umetrics社からは発表者6名の他にも数名が参加してくれていた.さらに,米国大学やメガファーマからも数名が参加していた.

Umetricsセミナーのアジェンダ@ボルティモアIFPAC
Umetricsセミナーのアジェンダ@ボルティモアIFPAC

ディナーを含めて3時間半ほどのセミナーで,SIMCAファミリーの各ソフトウェアについて,担当者から概要を紹介してもらったので,日本人参加者の情報収集には役立ったと思われる.

Umetricsセミナーのオープンバー@ボルティモアIFPAC
Umetricsセミナーのオープンバー@ボルティモアIFPAC

セミナーに先立つディナーはビュッフェ形式で,オープンバーも用意してくれていた.各種ビールやワインなどが飲み放題で,料理もボルティモア名物のクラブケーキをはじめ,魚,肉,野菜などが食べ放題で,このセミナーに相当コストをかけてくれていることがわかる.

Umetricsセミナーのビュッフェ@ボルティモアIFPAC
Umetricsセミナーのビュッフェ@ボルティモアIFPAC

クラブケーキなど@Umetricsセミナーのビュッフェ
クラブケーキなど@Umetricsセミナーのビュッフェ

実質4日間の会議であったが,日本人参加者向けセミナーを企画するなど,充実したプログラムで,QbD/PAT分野で仕事をしている日本人研究者・技術者の横の繋がりを強化していくきっかけになったのではないかと思う.既にメールベースで,会議で得た情報の共有化も始められており,これを機に,会社の垣根を越えたネットワークが構築されていくことを期待している.

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