11月 262013
 

私はコーヒーを飲んでもすぐに寝ることができる.でもまあ,そんなことはどうでもいい.

コーヒーについて調べると,コーヒーをよく飲む人のガン発生率は低いという研究結果を見付けたので紹介しよう.独立行政法人国立がん研究センターによる全国11保健所管内14万人の地域住民を対象とした長期追跡調査(多目的コホート研究)の成果だ.多目的コホート研究の成果紹介ページには以下のように記載されている.

コーヒーをよく飲んでいる人で肝がんの発生率が低い

調査開始時には、対象者の33%はコーヒーをほとんど飲まず、一方37%はほぼ毎日コーヒーを飲んでいると回答していました。調査開始から約10年間の追跡期間中に、334名(男性250名、女性84名)が肝がんになりました。調査開始時のコーヒー摂取頻度により6つのグループに分けて、その後の肝がんの発生率を比較してみました。なお、コーヒーをよく飲む人では喫煙者が多い、野菜やお茶の摂取が少ない、男性では飲酒量が少なく、女性では飲酒量が多いなどの傾向がみられ、これらの要因自体が肝がんの発生率と関連する可能性がありますので、あらかじめその影響を考慮して分析しています。

コーヒーをほとんど飲まない人と比べ、ほぼ毎日飲む人では肝がんの発生率が約半分に減少し、1日の摂取量が増えるほど発生率が低下し、1日5杯以上飲む人では、肝がんの発生率は4分の1にまで低下していました。発生率の低下は男女に関係なく見られていました。

なお,この研究成果は”Influence of coffee drinking on subsequent risk of hepatocellular carcinoma: a prospective study in Japan“というタイトルで,学術雑誌J Natl Cancer Inst.に報告されている.

この研究成果を見れば,毎日コーヒーを飲もうかという気にもなる.肝がんの発生率が約半分にまで減少するのだから.

でも肝がんだけですよね,とコーヒー効果に懐疑的な人もいるかもしれない.では,別の研究成果も紹介しよう.同じく独立行政法人国立がん研究センターによる多目的コホート研究の成果で,成果紹介ページには以下のように記載されている.

コーヒーは女性の浸潤結腸がんを予防

今回の研究では、女性の特に結腸浸潤がんにおいて、コーヒー摂取によるリスク低下がみられました。コーヒーを飲用による結腸がん予防のメカニズムとして、腸内の胆汁酸や中性ステロールの濃度が抑えられることがまず挙げられます。その他にも、腸の運動を活発にしたり、高血糖を防ぎ糖尿病を予防したりする作用があります。また、コーヒーの成分には、抗酸化作用を持つカフェインやクロロゲン酸の他にも、ヘテロサイクリックアミンなどの発がん物質に対抗する作用を持つ成分も知られています。

なお,この研究成果は”Coffee consumption and risk of colorectal cancer in a population-based prospective cohort of Japanese men and women“というタイトルで,学術雑誌Int J Cancer.に報告されている.

コーヒーが凄い作用を持っていることは明らかだ.これはもう飲まずにはいられない.

さて,ここまで読んで,あなたはどう判断するだろうか.

コーヒーを毎日飲んでガンを予防しよう!と思うだろうか.

それとも,こんな研究成果は眉唾.コーヒーなんて飲みませんよ!と思うだろうか.

結論を出してしまう前に,もう1つ,コーヒーに関する研究成果を紹介しよう.

1日4杯超コーヒー飲む人は早死にする? 米研究

米ルイジアナ州ニューオーリンズの心臓専門医、カール・ラビー博士らが専門誌「メイヨー・クリニック紀要」に報告したところによると、同博士らは20~87歳の男女4万人を16年間にわたって追跡調査した。その結果、55歳未満でコーヒーを1週間に28杯(1日平均4杯)より多く飲むグループは、飲まないグループに比べて死亡率が男性で56%高く、女性では2倍に上ることが分かったという。

これは2013年8月19日にCNN.co.jpで紹介された記事だが,コーヒーをたくさん飲むと死亡率があがるという研究成果が紹介されている.この記事を読めば,コーヒー党は心穏やかではいられないだろう.悟りの境地に達していれば別なのかもしれないが...

さて,改めて尋ねよう.

ここまで読んで,あなたはどう判断するだろうか.

コーヒーを毎日飲んでガンを予防しよう!と思うだろうか.

それとも,コーヒーなんて飲みませんよ!と思うだろうか.

このコーヒーの例からも分かるとおり,衝撃的な部分だけを切り抜いて伝えるような週刊誌やテレビなどの健康情報を鵜呑みにして,軽率な行動をしてはいけない.情報は偏りなく集めるようにしたい.それが情報リテラシーであり,騙されないためには必要なことだろう.

また,完全食品などというものはないと考え,何でも程度の問題だと捉えるのがよいだろう.中庸が大切だ.

最後に,これは非常に大切なことで,是非とも覚えておいてもらいたいのだが,相関関係があるからといって因果関係があるとは限らない.この2つは全く異なるものだ.これが理解できていない人は騙されやすい.

実際,コーヒーの話にしても,ちゃんと論文を読めば慎重な物言いになっている.例えば,肝がんに関する多目的コホート研究の場合,次のような解説が付されている.

現在コーヒーをたくさん飲んでいる人からの肝がん発生率が低いというのは、おそらく事実でしょう。しかしながら、現在よりもコーヒーを多く飲むようにすると肝がんの発生率が低くなるか否かについては、さらなる研究により確認しなければなりません。特に、肝がんになる人の多くがかかっているウイルス性慢性肝炎や肝硬変などのように肝機能が悪い状態では、カフェインを代謝する機能が障害されるために、コーヒーを飲む量が減るという報告もあり、結果として、あたかもコーヒーをよく飲んでいると肝がんになりにくいかのように見えているだけなのかもしれません。

このような分析をきちんとしているのが研究者だ.研究者の説明は概して歯切れが悪い.それは観測された事実から何が言えて何が言えないかを冷静に判断し,正しく伝えようとしているからだ.しかし,煽り記事は衝撃的な部分だけしか伝えない.そういう雑な情報を欲しがる読者や視聴者がいるかぎりは.また,そういう読者や視聴者がいるから,研究成果もないのに研究者を名乗る有名人が登場するのかもしれない.

さて,私はコーヒー(正確にはエスプレッソ)が好きなので,今からエスプレッソを飲みます.もちろん,飲み過ぎにならない程度に.

  One Response to “コーヒーを飲むとガンにならない?それとも死にやすい?”

  1. ガンとコーヒーとタバコについて,下記情報を教えていただきました.色々な関係が調べられているのですね.

    「1日1杯以上のコーヒーを飲む人は、飲まない人に比べて膀胱癌のリスクが1.5倍高まる。コーヒーに含まれるカフェインは、癌細胞の自滅を乱す働きがあり、喫煙者より非喫煙者の方にコーヒーの影響を受け易いようでリスクが高まる。同じ量のコーヒーを飲んでも、喫煙者の方が体内でのカフェインの消失が早く、非喫煙派のほうが尿に含まれるカフェインの量が多い。」
    http://www.long-life.net/newpage132.html

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