6月 192014
 

2012年7月に,ロンドンのベッドタウンになっているGuildfordという街にあるUniversity of Surreyを訪問した.そこで大学教員から聞いた話をまとめておく.

イギリスの大学は日本とは異なるシステムを採用している.Lecture以上がテニュアなので,Lectureshipを獲るのが難しいが,さらに,その後Professorになるのは凄く難しいようだ.Senior Lecturerには簡単になれるが,PrefossorになるためのReadershipが獲れない人も多い.つまり,最終職歴がシニアレクチャーで退職する研究者も少なくないようだ.Full Professorにならなくていいなら,プレッシャーも少なくて比較的ハッピーなものかもしれない.

研究者(大学教員)の業績評価は,過去5年間の主要論文4報に対してなされる(UCLで聞いたのと少し違うので間違っているかも).このため,論文を量産する必要性は全くなく,腰を据えた研究に取り組める環境が用意されている.

論文がどのジャーナルに掲載されたかは重要で,Impact Factorも重要性を増している.ただし,分野によって主要雑誌や基準となるIFは異なるので,専攻(Department)ごとに主要雑誌を登録しておく.このため,専攻の主要雑誌に登録されていないジャーナルに論文を発表しても全く無意味で,業績としては無視される.このため,質の高い研究成果をトップジャーナルに載せるという動機付けが為されているものの,専攻内の他の研究者と異なる分野の研究をしていると,かなり辛い状況になる.これはこれで問題がある.

ちなみに,話を聞いた研究者は,英国のUniv of Surreyに来る前に,シンガポールのNanyang Tech Univにいたが,シンガポールでは論文数を増やせと言う圧力が凄まじかったらしい.年10報だと少ないと怒られるのだそうだ.しかも,シンガポール(その専攻だけかもしれないが)では,共同研究者を増やして共著者になりまくれ,他の研究者に頼んで自分の論文を引用してもらえ,と露骨に言われたりしたらしい.それに嫌気がさして,イギリスに移ったとのことだった.

イギリスでは,教員が大学院生に給料を出す義務はない.特に,自力で奨学金を見付けてきたか,あるいは金持ちでその必要性がない学生には何もしなくてよい.そうでない学生にはFellowshipを出すとのこと.また,イギリスの大学では,イギリス人の学費が安い一方で,留学生の学費は無茶苦茶高い.数倍は当然で,留学生には経済的に厳しい制度となっている.ビザが取りにくいなども含めて,保守系の政党が実権を握ってからの変化らしい.トニー・ブレアのときは海外から積極的に呼び寄せていた.

以上.イギリスの研究業績評価の仕組みにも見習うべきところがある.

(聞いた話をまとめたものなので間違いがあるかもしれません.間違いがあればご指摘下さい.)

  3 Responses to “イギリスの大学における研究業績評価:University of Surrey訪問”

  1. Imperial Collegeでポスドクをしている者です.いつも楽しく読ませて頂いています.私の知る限りでも,上の記事と同じような状況だと思います.ただLectureshipには任期付きの物もあるようで,期限内にある程度成果を出して,次のアテ(延長なり,他のポストなり)を見つけておかないと,放り出されてお終いというようなことも聞きました.このあたりは日本の特任助教などと似ているような気がします.
    保守政権による実質的な移民排斥は,留学を希望する学生にとっては痛手でしょうし,また研究者としてもつらい,というか面倒です.研究者はskilled workerにあてはまるので,必要なプロセスを踏めばビザ拒否はされにくいでしょうが,EU内から雇う場合と比べるとやはり煩雑です.研究室の運営者としても,「できればEU内から...」というのが本音でしょう.また,「EU外から人を雇う権利(≒ビザを出す権利)」というのを保持するために,年間数百ポンドを政府に納めるj必要があると聞いたこともあります(聞き間違いかもしれませんが).
    現状こちらの研究環境は良いですが,テニュアを取って腰を据えるという長い目で見ると,余所者は相当不利かもしれません.

    • Masashiさん,情報ありがとうございます.英国に住んで研究されている方でないと実際のところはなかなかわからないと思いますので.やはり,EU圏外の人間には相当厳しくなっているのですね.

      Imperial Collegeはいいですよね.もちろん大学のレベルも高いですが,立地も素晴らしいです.一度しか訪問したことはありませんが.

  2. >「イギリス人の学費が安い一方で,留学生の学費は無茶苦茶高い」
    イギリスの大学でLecturerをしている者ですが、これについて指摘させてください。
    イギリス(England and Wales)では2012年まではEU並びに国内出身学生には政府からの助成の割合が高かったため、Full feeを支払うEU外からの学生に比較して3分の一ほどの学費負担でしたが(つまりEU・UK学生の学費が3000ポンドとするとEU外学生の学費は9000ポンド)、2012年度に政府からの助成が大幅にカットされたため、現在では/UK学生と、EU外学生の学費の差はさほどではありません。勤務先(文系)では2014・15年度のEU・UK学生学費は9000ポンド、EU外学生は12100ポンドです。またよく「イギリスの学費は(他EU内大学に比して)高い」と酷評されますが学部1年のうちからワン・ツー・ワンの論文指導を行うなど、他国にはないきめ細かい指導をしています。いたずらに「学費が高い」だけではないと思っています。
    (前述のように以上はEngland/Walesの状況で、スコットランドでは今もEU・UK学生は学費無料のはずです。)
    このような情報は正確さを期していただきたいと思います。

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