7月 062015
 

上海から無錫に向かう車内で,空港まで迎えに来てくれたPhD候補女子学生さんに聞いたところでは,江南大学の場合,奨学金を支給する組織として,中国国家留学基金管理委員会(CSC),州政府,大学の3種類あるそうだ.中国国家留学基金管理委員会(CSC)の奨学金が中国全体をカバーするが,競争率は高い.3日ほど前に採否発表があり,その女子学生は江南大学とアルバータ大学との双方で研究する計画が採択され,9月から1年半カナダに行くと言っていた.

今年10月から当研究室に研究生として来る学生の1人は,来年4月に博士後期課程入学予定で,42カ月間の奨学金申請が中国国家留学基金管理委員会(CSC)に採択されている.色々な制度があるようだ.選考基準はよくわからないが,学生本人の研究業績だけでなく,指導教員の研究業績も重要だと聞いた.私も色々と提出した気がする.

江南大学は総合大学だが,博士学位申請には国際ジャーナルに論文3報が採録されることが必要条件らしい.それが大学全体のルールか,彼女が所属するSchool of Internet of Things (IoT) Engineeringのものかは未確認だが,3本が必要条件というのはなかなか厳しい.日本国内でも論文3報採録が目処とされているところは少なくないと思うが,日本語ジャーナルや国際会議でも許されたりすることが多く,厳密に国際ジャーナル論文3報採録が必要条件であることは希だと思う.このため,修士課程に進学するとすぐに,バンバン論文を書けというプレッシャーがかかるそうだ.中国の大学の数と学生の数でバンバン論文を書いてくるわけだから,日本の論文数なんて話にならなくなるのも当然かと思わされる.

個人的には量より質を大切にしたいが,そうも言っていられない現実がある.

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School of IoT Engineering@江南大学

欧米の大学で活躍している中国人研究者が,中国との接点となり,大学間の連携を密にしている.今回はカナダのアルバータ大学と中国の江南大学が中心となった国際ワークショップに招待してもらったわけだが,これとは別に,私と同じ研究分野の米国の教授は中国の大学の副学長もしていると言っていた.そういうネットワーク作りが日本は弱い(戦略的でない)ような気がする.そもそも,破格の待遇で一流研究者を迎えるという仕組みが日本の大学にはない.

国際ワークショップが終了した翌朝,無錫のホテルから上海虹橋空港まで,江南大学の車で送ってもらった.無錫から虹橋空港までは1時間半ほど,浦東空港まではさらに1時間ほどかかる.車中,カナダのUniversity of British Columbia (UBC)の若手教授と一緒だった.雑談の中で,大学教員の待遇についても聞いてみた.

UBCのキャンパスがあるバンクーバーは,住みやすい都市ランキングでいつも上位に来るような素晴らしいところだが,バンクーバーで一軒家を買うと2億円はするらしい.先日レンタカーで駆け抜けたMarine Dr.沿いの海に面した豪邸だと10億円からとのことだ.大学教授の給料ではバンクーバーで一軒家はとても買えないようだ.彼はUBCキャンパス内のファカルティ用住宅(アパート)に住んでいるが,80m2しかなく狭いと言っていた.確かに子供が増えるときついかもしれない.ちなみに,UBCの給料だが,若手教員で1000万円から,シニア教員で2000万円からが目安とのことだった.大雑把に言えば,日本の国立大学教員の給料の2倍だ.

日本の大学の2倍の給料を普通に得ている海外の研究者が,しかも一流の研究者が,わざわざ日本の大学に本拠地を移す理由があるようには思えない.外国人教員***人とかいう数値目標を掲げるにしても,一体全体,どの層がターゲットなのかが問題だろうと,今更だが改めて思った.

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School of IoT Engineering@江南大学

今回の江南大学滞在中,学生は大学教員をteacherと言っており,学生がprofessorという言葉を使うのを一度も聞かなかった.日本で先生と言うのと同じ感覚だろうか.欧米の大学ではteacherが使われるのを聞いたことがないような気がする.

江南大学については,これまでに書いたこと以外に,今回の滞在中に次のようなことも聞いた.サバティカルの制度はない.准教授以下は教授から独立していない.博士後期課程は人気がない.

国際会議に参加して最先端の研究内容について議論するのは研究者として当然必要なことではあるけれども,それだけにとどまらず,海外の大学を訪問して実態を見てくるのも大学教員にとって重要なことだろう.正直,日本は過去の栄華にすがっているだけじゃないかとも思える.

7月 062015
 

中国江蘇省無錫市にある江南大学のキャンパスは緑豊かで広々としていて非常に良い印象を受けた.大学のキャンパスはこのようであって欲しい.IIT卒のインド人研究者も江南大学のキャンパスはIITに似ていて素晴らしいと言っていた.バンクーバーのUBCもキャンパスが素晴らしいが,そこの教授も褒めていた.

“緑豊かで広々としたキャンパス@江南大学”
緑豊かで広々としたキャンパス@江南大学

“江南大学の南門@無錫”
江南大学の南門@無錫

キャンパスが広大なため,国際ワークショップの会場とレストランの往復には電気自動車を利用する.車両自体はぼろい.

“キャンパス内は電気自動車で移動@江南大学”
キャンパス内は電気自動車で移動@江南大学

グラウンドでは軍事教練が行われていた.軍事教練は学部1回生の必修らしい.ちなみに,学部生は全員,キャンパス内の寮に住むことになっている.キャンパス以外に住むためには許可が必要とのことだ.

“軍事教練を終えた学部1回生@江南大学”
軍事教練を終えた学部1回生@江南大学

今回のワークショップは”Process Control Workshop”という名称だ.初日は中国人研究者のみを対象とした中国語での会議,2日目が国際ワークショップとなっていた.

“国際ワークショップのプログラム@江南大学”
国際ワークショップのプログラム@江南大学

“国際ワークショップの会場@江南大学”
国際ワークショップの会場@江南大学

今回のワークショップでは,大学院生も聴講するということで,講演の最後に,例の「非基礎かつ非応用の研究はするな!」の話をした.それをきっかけに,ワークショップ最後の討論では,学生が研究テーマを決める際に注意すべきことも話題になった.

研究テーマを選ぶのは難しい.流行を追いかけて人気絶頂のテーマに手を出しても,重要な問題は先人が既に設定して解決もしていて,そこでオリジナルで顕著な成果を出すのは難しい.レッドオーシャンに飛び込むのは避けるべきと思うとUBCの教授も言っていた.しかし,誰も手を出していない問題をやればいいわけではない.そういう問題は単に手を出す価値がないから放置されているという恐れもある.博士を取得しようとするなら,テーマ設定も自分でできないと将来が危ぶまれるが,そうは言っても,テーマ設定に関しては指導教員にも責任があるだろう.いずれにせよ,指導教員の影響と責任は大きいのだから,優れた指導教員を選ぶことが大切であるのは間違いないと,私の意見を述べておいた.その他には,分野をリードしている研究者の動向を追いかけるのも重要で,たくさん論文を読むようにというアドバイスも出ていた.