10月 292015
 

韓国化する日本、日本化する韓国
浅羽祐樹,講談社,2015

Book_Asaba2015

機内で「韓国化する日本、日本化する韓国」を読みおえた.内容は「そりゃそうだよね」と感じる部分が多いが,本書のタイトルと内容はあまり関係がないように感じた.タイトルの由来は,本文中に引用されている産経新聞の黒田勝弘記者の指摘「日本の『嫌韓』は,相手の等身大の姿を捉えようとはじめからしていない.それは,日本がこれまで批判してきた韓国の『反日』とまったく同じである.相手の悪いところに似る『日本の韓国化』は残念でならない」にあるようだ.そして,韓国化する日本と日本化する韓国の先鋒となっているのは日本のネトウヨと韓国のイルベだと,著者は指摘している.

ただし,著者は同時に,日本で嫌韓を牽引するネトウヨは,実は若者ではなく高齢者であり,新聞や週刊誌の中心になる読者層とちょうど重なっているとも指摘している.

「韓国に対して良い感情を持っていない」のは,主に50〜60代のわりと高齢世代です.いわゆるネトウヨは若者のイメージがありますが,ヘイトスピーチを繰り広げたりデモに行くような人たちは,よく見るとオジさんが多いように思われます.

一方,韓国では,国民の平均年齢が40代に入り,幼い頃から反日教育を受けてきた世代が社会の中核を担うようになるなか,日本に対して良くない感情があるのは当然であり,それが外交戦略にバイアスがかかる原因にもなっているというのが著者の見立てだ.しかし,若者は反日に凝り固まっているわけではなく,もっと冷静だという.

韓国では1990年代ぐらいから,留学などで海外に出る若者が増えました.20代・30代は,ナショナリストというより,グローバリストといってよい.しかも韓国は周知のとおり,大変な競争社会です.大学受験はもとより,ビジネスでは狭い自国内ではなく,他国のライバルと争っていかないといけない.(中略)競争がなかった世代のオジさんたちと感覚が根本から違うのは当たり前.日本を敵視するより,視線ははるか遠くに向いていて,そんなちっぽけなことで勝った負けたと一喜一憂している暇はとてもないというのが,本当のところでしょう.

私が見たところ韓国では若く,学歴の高い,これから社会の中核をなしていくだろう人たちは,日本に好意的でも敵対的でもありません.もっとドライで,クールです.彼らとは今後淡々と仕事し,競い合っていけることでしょう.

日本も,まったく同じことがいえます.若く,リテラシーがあり,生活環境に恵まれている人は,フェアな目で韓国を見ています.

オジさんたちはいずれ世論の中心からフェードアウトしていくでしょうから,いまの若い世代に入れ替わったら,日韓関係は質的に異なるものになると思います.

戦後からこれまでの日韓関係を見ていると,世代が変わったからといって,良好な関係になるかどうかは疑問だ.著者も「質的に異なるものになる」とは言っているが,良くなるとは言っていない.それよりも,韓国の若者の日本離れを懸念している.

日本としては韓国内の「反日」ブームより,「日本は特に重要ではない」という流れが定着するのを,阻止したいところです.

グローバル社会において,島国の日本がこれだけ距離の近い隣国に「軽んじられている」というのは,見過ごせない問題です.これからの「ゲーム」の進行上,日韓ともに,いろいろと不利になります.

韓国は中国重視の姿勢を鮮明にしており,アメリカも軽視はできない.それでも,これら両大国の間でうまく蝙蝠を演じられれば,日本は目障りなことをしない限り,どうでもいいというところだろうか.

日本は日本で,経済大国という過去の名声が拠り所のような有様で,一億総活躍とかいいつつ,福祉も教育も何もかもを形振り構わず切り捨てる勢いなのだから,軽んじられるのも無理はないように思われる.教員を大幅に削減して,高等教育予算も減らし続けるという財務省案が発表されて,ますます社会的階層の固定化が進みそうな状況になっているが,この階層社会の問題点も本書で指摘されている.

実は国民性なんていうものは,ないと考えています.むしろ日韓とも,階層の差が顕著です.知的に開かれ,経済的にも恵まれたクラスタの高い人たちは,まったく「嫌韓」「反日」ではありません.そちらはそちらでうまく通じ合って,ビジネスなど交流を盛んにしています.一方,「嫌韓」「反日」の人たちは,互いの国を行き来しようなどとは考えません.傾向として学歴や年収が低く,乱暴な言い方かもしれませんが,リソースに恵まれていない人が多いです.

一般に,社会的な階層が高い人ほど,異質なものに対してオープンな姿勢であり,階層の低い人は異質なものを嫌い,排他的になるというのは,全世界的な傾向です.国境ではなく属性の違いが人々の間で分断線になりつつあります.歴然たる階層社会を,国民性の議論が巧妙に隠しているという,厳しい現実を直視する勇気が必要だと思います.

実際,私が目にする範囲に限れば,反日で騒いでいるインテリなんて韓国で見掛けたことがない.嫌韓も同様だろう.さて,韓国は中国に頼る道を選び,中国に取り込まれつつあるが,日本はどうするのか.

目次

 
第1章 韓国人の特性を考える
第2章 落としどころを見失った判決
第3章 竹島問題に有用な視座
第4章 韓国人の「位相」と日本がすべきこと
第5章 韓国は北朝鮮との統一を果たせるか?
終章 あまねく、通じること