3月 162016
 

researcher

最近,大学では任期付きのポジションが増えている.多くの場合,大学院に進学し,同期が就職していくなか,大学に残って研究を続け,苦労して博士号を取得した若手研究者が対象になる.例えば,巨額の研究予算がつく大型プロジェクトの場合,そのプロジェクトの実施期間中のみ雇用するという形態がある.この場合,金の切れ目は縁の切れ目の言葉通り,プロジェクトが終了したら(研究費がなくなったら)さようならだ.この他,若手研究者を例えば5年間の任期付き助教として採用して,5年間の研究成果(論文を出して審査されて次の職を探すことまで考えると実質3〜4年か)が顕著であれば継続して雇用し,研究成果が認められなければ任期通りに雇用を終了するという形態もある.

昔は任期なしでの雇用が当然だった(私も大学院修士課程修了後に任期なしの助手として採用された)ので,それから比べると今の若手研究者は非常に厳しい環境におかれている.とは言うものの,研究成果が出せない人には早い段階で別の道へ進んでもらうことも必要だろう.それが本人のためだという考え方もある.

今の若手研究者はそのような環境で研究をしているわけだが,本日,ある大学で博士の学位を取得した後,地方国立大学に任期付き助教として赴任された方と話をしていて,特に問題は女性の場合だと教えてもらった.

大学4年,大学院修士課程(博士前期課程)2年,博士後期課程3年とすると,博士の学位を取得する時点での年齢は27歳前後になる.それくらいの年齢になれば,結婚や出産について考える人は多いだろうし,実際に結婚したり出産したりする女性研究者もいるだろう.このとき,例えば5年の任期付き助教として雇用され,3〜4年程度で研究成果を出さなければ雇用を継続しないと言われたら,安心して出産や育児ができないだろう.女性研究者の比率を増やせ,その数値目標を出せ,といった圧力がかかる現在の状況にあって,それでも実態としては,女性の出産や育児に対する配慮がないままに,任期付きのポストを運用しているケースもあるようだ.しかし,それでは女性研究者に酷すぎるのではないだろうか.

上記のようなことをツイートしたところ,以下のような例があると教えていただいた.

知人に5年間の任期付き助教の職にある際に出産し,産休中に任期が切れる(産休も5年間に含む)という方がおります.産休中に次のポストも見けられていないようで(むしろ子どもが小さいと敬遠されるようです)・・・

他にも,このような例があると教えていただいた.

地方の私大などでは採用面接の際に出産や結婚について質問されて,「もうこれ以上,子供は産みませんよね」と確認された方もおります(少し前の話ですが).

最近は,大学教員を公募するときに,男女雇用機会均等法の趣旨に則り云々と公募要領に書くことが普通になり,少なくとも女性が不利になるようなことはしないことが徹底されてきているので,露骨な差別はなくなっていると期待している.しかし,上述のように,女性の出産や育児に対する配慮を欠いているとすれば,そこは直していくべきだと思う.例えば,出産や育児のために職場を離れる期間分は任期を延長するといった方法も考えられるだろう.

上記のように「女性研究者に酷」とツイートしたところ,女性が出産・育児にかかる負担の大半を負うことが前提になっているのは問題ではないかとのご指摘をいただいた.出産は女性にしかできないが,女性研究者も男性研究者も同様に育児に携われば,性別に関係なく,任期付きの研究者にとっては厳しい環境にあると言える.この指摘を受けて,私みたいに意識が低い輩が,女性が出産もキャリアも大事にできる環境を実現するのを無自覚に邪魔しているのかなと反省している.