3月 212016
 

僕は君たちに武器を配りたい
瀧本哲史,講談社,2011

book

投資家である瀧本氏が,本物の資本主義が行き渡る世界で生きていく(稼ぐことができる)ための思考方法や行動様式を,武器として若者に伝えることを試みたのが本書「僕は君たちに武器を配りたい」ということになる.ターゲットとする読者と伝えたいメッセージが明確な,著者が意図した通りの,読みやすい本だ.実際,文字も大きいし,すぐに読める.特に,投資に縁のない人が読むと刺激を受けるだろう.これから就職活動をする学生(その多くは投資を体験したことがない)にはとても参考になると思う.投資経験者にとっては「そうだよね」と頷く部分が多いはずだ.「日経新聞を読んでも決して鵜呑みにするな」とか.

本書「僕は君たちに武器を配りたい」に登場する武器は数十に及ぶが,そのうちのいくつかを紹介しておこう.

  • 全産業で「コモディティ化」が進んでいる.賃金を下げないためにはコモディティになるな.
  • 一部の「頭のいい人」ではなく,「より安く,よりいい商品」を作る人間が,社会を進歩させるシステムが資本主義.
  • 現役学生が起業するのは「高学歴ワーキングプア」への道.コモディティ企業を作るな.
  • 企業を見極めるポイントは「お客さんを大切にしているか」.顧客を大事にする会社は従業員も大切にする.
  • 「自分の頭で物事を考えない人」は,DQNビジネスのカモにされる.
  • イノベーションのチャンスは「今しょぼい業界」にある.
  • サラリーマンとは知らないうちにリスクを他人に丸投げするハイリスクな生き方.リスクは自分自身でコントロールせよ.
  • 大学では「奴隷の勉強」に時間をかけず,自由人になるための「リベラル・アーツ(教養)」を学べ.

「弱虫ペダル」で御堂筋君がしつこく繰り返しているが,量産型は生き残れない.ザクは生き残れない.本書の言葉で言うと,コモディティになってはいけない.コモディティの対極にあるスペシャリティな人間になる必要がある.スペシャリティな人間として資本主義社会で生き残る(稼げる)タイプは6つだと瀧本氏は指摘する.トレーダー,エキスパート,マーケター,イノベーター,リーダー,インベスターだ.それらが何であるかは,想像するか,本書を読んでもらうとして,これらのうちトレーダーとエキスパートは価値を失いつつあり,マーケター,イノベーター,リーダー,インベスターのいずれかのタイプになる努力をすべきだという.

研究者はエキスパートの典型例だと思うが,いまどきの大学の研究者にはマーケターやイノベーターとしての能力も求められる.そうでないと十分な研究資金を獲得することも難しい.

本書で瀧本氏は,自分が大きな影響を受けた本として「君たちはどう生きるか」(吉野源三郎)を挙げて,コペル君とおじさんの会話を紹介している.コペル君は中学2年生(15歳)で,彼の様々な経験が物語として展開してゆく.中学生・高校生くらいの青少年を対象にして書かれた倫理・道徳の本と言っていいだろう.ただ,瀧本氏が印象に残っているとしている内容は,倫理や道徳とは異り,さすが投資家視点という感じがする.

「奴隷の勉強」に時間を費やすのではなくリベラル・アーツ(教養)を学べなど,高校生や大学生が何を勉強するか,何に自分の時間を費やすかを考えるキッカケも与えてくれると思う.本書の内容に同意するかどうかはともかく,自分の人生には自分が責任を持つしかない.自分自身に投資をして,自分の価値を高めるのも重要なことだろう.

この本は読むだけでは意味がない.読んで理解したことを行動に移してこそ意味がある.使い方を知らない武器を綺麗に飾っていても戦えない.

目次

 
第1章 勉強できてもコモディティ
第2章 「本物の資本主義」が日本にやってきた
第3章 学校では教えてくれない資本主義の現在
第4章 日本人で生き残る4つのタイプと、生き残れない2つのタイプ
第5章 企業の浮沈のカギを握る「マーケター」という働き方
第6章 イノベーター=起業家を目指せ
第7章 本当はクレイジーなリーダーたち
第8章 投資家として生きる本当の意味
第9章 ゲリラ戦のはじまり

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